愛でられて、絆される
「━━━━うん!やっぱ似合う!」
試着室から出てきた絆奈を見て、微笑む。

「ほんと、ありがとう!
こんな素敵なワンピース。
大切に着るね!」

「うん!
紙袋、貸して?僕が持つから!」
着ていたパーティードレスが入っている紙袋をさりげなく取り、反対の手で絆奈の手を繋いだ。

「会計は済ませたから出ようね!」
そう言って手を引き、店を出た。

ふと那王の手を見ると、パーティードレスの入った紙袋ともう一つ同じ紙袋を持っている。

「ん?那王くん、その袋……」

「ん?他にも買ったんだよ!絆奈が着替えてる間に。
絆奈が見てたスカートとカーディガン、あと…他にも似合いそうなのがあったから」

「え………」

「貰ってくれるよね?」

「那王くん、ダメだよ!」

「どうして?」

「こんなの、おかしいよ……」

「…………僕はただ…絆奈をずっと、僕のところに留めておきたいだけだよ」

「………」

「言ったよね?
“なんでもしてあげたい”って。
……………不安、なんだ。
やっと手に入ったのに……
絆奈が僕から離れたら…って考えるだけで頭がおかしくなる」

「………」
(離れないのに。
何があっても。
だって、ずっと恋い焦がれてたんだから)

「…………だからね。
貰ってよ」

「うん、わかった。
ありがとう!」

絆奈が微笑むと、那王も嬉しそうに笑った。


“もう一件、行きたいところがある”
そう言われて、つれてかれた所。

「━━━━え?那王くん、ここ…」

ガラス張りの高級な外観の建物。

“HONAMI Jewelry ”

那王がオーナーを勤める、ジュエリーショップだ。

「━━━━いらっしゃいませ!
あ、オーナー!」
これまたイケメン従業員が出てきて、挨拶してきた。

「“例の物”持ってきて?」

那王が言うと、微笑み「こちらへどうぞ?」とある部屋に促された。

部屋の中も、高級感のある内装になっていた。

ガラスのローテーブルに、レザーのソファ。
テーブルの上には、花瓶に色とりどりの花が生けてあった。

「す、凄い部屋だね!なんか、キラキラしてる…」

「VIPルームだよ。
ウチは、有名人や著名人も相手にしてるからね。
中にはお忍びでくる人もいるし」

「そっか!
━━━━━ん?でもそんな部屋に、私なんかが……」


「絆奈も、立派なVIPだよ?」

そう言って那王は、絆奈の鼻先をチョンと弾いた。
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