愛でられて、絆される
「あっという間に日が暮れてきたね…」
「そうだね」

「夕御飯、何処で食べようか?」
「あ、その前に…行きたいところがあるの。
いいかな?」

那王は大きく頷き、微笑んだ。


「━━━━あ…!ここ……」

「覚えててくれてた?」

「もちろん!
絆奈との、たった一度だけのデートで行った海!」

中学三年の秋。
文化祭に使う材料の買い出しに、那王と絆奈は二人で街へ行った。

本当は他にもクラスメートがいたのだが、絆奈の友人が協力してくれ、二人で行けるようにしてくれたのだ。

「うん!
もし……那王くんとまた逢えたら、行きたいなって思ってたの!
出来るなら……恋人として/////」

「そっか!
楽しかったよね!」

「フフ…でね!こっち!」

少し奥の、人気のない小さなスペース。
大きな丸太があり、そこに名前を彫ってあった。

“NAO♡KIZUNA”

「え……これ……」
那王が不思議そうに絆奈を見る。

「私が…書いたの/////」

「そうなの?」

「ほ、ほんとはね。
あの日、那王くんに告白しようと思ってたの」

「え…/////」

「でも…フラれたらって考えばっかで怖くて……
結局、言えなくて……
だから“いつか、恋人になれますように”って願いを込めて、那王くんと別れた後にここに戻ったきて彫ったの。
まさか、プロポーズまでしてくれるなんて思わなかったけど(笑)」

「そうだったんだ……!」

「那王くん」
那王を見据える、絆奈。

「ん?」

「私も、那王くんの未来が欲しいです!」

「フフ…うん!嬉しっ!」

「ほんとは、この指輪も今すぐにはめたいくらいだよ!
でも、まだ…那王くんの隣に立てるだけの自信がない」

「うん」

「だから、私が自信を持てるまで…待っててくれますか?」

「もちろん!」

海風が、優しく二人を包んでいた。


「━━━━━お腹すいたね!」
「そうだね」

「絆奈、何食べたい?」
「うーん…
あ!私がよく行く親子丼のお店は?」

「うん、いいよ!」
「あ!それでね。
私にご馳走させて?」

「え?
ダメだよ!
絆奈に払わせるなんて……」

「私にも、気を遣わないで?」

「絆奈…」

「ね?
大したものじゃないけど、私も那王くんのために出来ることしたい!」

「……/////」
見上げて言う絆奈に、心が更に奪われる那王。

あぁ、この人を好きになって良かったと思うのだった。
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