愛でられて、絆される
島山が車に戻ると、絆奈は車の外で待っていてすかさず頭を下げてきた。

「先輩、本当にすみませんでした!
もう、こんなことがないようにしますので!」

“一度犯した失敗は、二度と繰り返さない”

那王の言葉が蘇った。

「もうその事はいい」

「あ、はい。すみません!」

「ただ、今後は私情は挟むなよ?」

「はい!すみません!」

「まぁ、お前が普段頑張ってること知ってるしな!
次から気を引き締めてくれりゃいい!」
微笑み言い、頭を撫でる島山。
絆奈も微笑んだ。

そして、スマホに那王からメッセージが入って、それを確認した絆奈。

表情が、分かりやすく変わった。

島山はそれを見て、那王からのメッセージだとすぐにわかった。
そのくらい絆奈の笑顔が、甘くて幸せそうだったから。

島山の心が、チクリと痛んだ。
(今、傍にいるのは俺なのに、あいつにはメッセージ一つでこんなにも喜ぶのかよ……!!)

「…………一橋は…さ…」

「はい」

「………」

「ん?先輩?」

「いや、なんもない。
それよりも、大変だなぁ!
あんなイケメンと付き合うの」

「え?」

「だって、絶対モテモテだろ?あのタイプは」

「あ…あぁ…そうですね……
考えないようにしてます…(笑)」

「でも疲れねぇの?」

「え?」

「ずっと、緊張してないとだろ?
つり合うように、嫌われないようにってさ」

「そう…ですね……」

我ながら、意地悪な言い方だと思った。
この言い方は、回りくどく“つり合ってない”と言っているようなものだ。

でも、止まらなかった。


その日。
なんとか、残りの仕事を終えた絆奈。
(もう私情は挟まないと決めたので、笑顔で頑張った)

とぼとぼと帰路につく。

「……………え…あれ…?」

気づくと、那王の住むマンション前にいた。

「なんで…私…何してんだろ……(笑)」
自嘲気味に笑い、帰ろうと踵を返す。

でも…………

那王くんに、会いたい……!
10分でも、5分でもいい。
顔が見たい。

そう思い、マンション前で待つことにした。


一方の那王。
仕事を終え、スマホを確認する。
昼間のメッセージの返信を見る。

【ありがとう!
なおくんにそう言ってもらえると、元気が出るよ(^^)
午後からも、頑張るね!
絆奈♪】

そして、その後にもメッセージが入っていた。


【なおくん、仕事お疲れ様!
仕事終わったら、連絡ください!
絆奈♪】
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