愛でられて、絆される
「絆奈を、二時間半も待たせたこと。
きっと、不安だったんじゃないの?
だからわざわざ待ってたんだよね?」

「それは……」

「電話、してくれて良かったのに。
繋がらなくても、メッセージでも良かったよ?
それよりも、店に来てくれても良かった」

「那王くんの仕事の邪魔したくなくて…」

「絆奈が、邪魔なんてあり得ない。
それよりも、一人であんな寂しい思いをさせたことが悲しいよ……」

「那王くん…」

「言ったよね?
“どんなことでもしてあげたい”って」

「うん…」

「もっと、ワガママ言ってよ?
僕のことを困らせるくらいのこと言ってくれてもいいんだよ?
絆奈は、僕の彼女でしょ?
絆奈だけは、それが許されるんだよ?」

「………うん」


家に入り、ソファに並んで座る。
那王がいつものように腰を包み込んできて、絆奈の頬やこめかみを愛で始める。

温かくて、優しくて、ちょっとくすぐったい愛撫。
それだけで、那王の愛情を感じる。

“私は、ちゃんと愛されてる”と思えた。

自然と、涙が出た。

「絆奈?
どうしたの?」
那王が顔を覗き込み、目元を優しく拭う。

「なんか…幸せで……」
「そっか!」

「時々……」
「ん?」

「凄く不安になるの」
「ん?」

「これって、夢なんじゃないかって……」
「うん」

「那王くんみたいな素敵な人が私の恋人っこと」
「………」

「ずっと、憧れてたから……」

「…………僕もだよ」

「え?」

「僕も、夢みたいだったよ。
再会できて、僕の恋人になってくれたこと。
指輪を受け取ってくれたことも」

「うん/////」

「だから僕はこうやって、絆奈にくっつくんだよ。
絆奈を抱き締めて、キスを何度もするんだ。
夢じゃないって実感したくて……」

「そうなんだ…」

「そうだよ!
夢じゃないよ。
僕は絆奈が好き!結婚したいくらい好き!
だからずっと傍にいるよ!」

「うん…!//////」
自然と二人の口唇が重なった。


那王が家まで送ってくれ、いつもように両手を握り言う。
「じゃあね」
「うん、ありがとう!」

「いつでも連絡してきていいんだからね!」
「うん!」

「僕だって、いつでも連絡するから!」
「うん!」

軽くキスをかわし、頭をポンポンと撫でて去っていった。

絆奈は、那王が見えなくなるまで見送りながら、もっと自信を持てるように頑張ろうと心に誓うのだった。
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