愛でられて、絆される
美しくなってゆく彼女
那王くんは、モテる。
とにかく、モテる。

容姿が整ってる上に、性格も良い。
どうやったらそんな人間出来上がるんですか?と言いたくなる程に全てが完璧だ。


ある日の夕方━━━━━━━

絆奈は仕事終わりに、駅に向かっていた。
那王と待ち合わせしているからだ。

那王は仕事が休みで、絆奈の仕事終わりにデートの約束をしたのだ。

FLOWER AVEまで迎えに行くと言う那王を断った、絆奈。

それは━━━━那王が店に来ると、同僚達の注目を一身に浴び、声をかけられ、みんなで食事に行こうと誘われるからだ。

那王は「絆奈が良いなら」とやんわり言うのだが、控え目な絆奈が断れるわけがない。

結局「良いですよ」となる。


しかし駅に急いで向かうと、那王が女性達に声をかけられていた。

「ん?なんだろ?」
(逆ナン?かな?)

絆奈は、その中に入っていくのを躊躇してしまう。

「………」
(こ、怖い……)

どうしても、輪の中に“自分から”入っていけないのだ。

那王が気づいてくれるのを待っていると、ポンポンと肩を叩かれた。
「え?」

「やっぱ、絆奈ちゃんだー」

「袴田さん?」

「うん、袴田さんだよ!
何してるのー?」

「あ、えーと…」
さりげなく、那王の方に視線をやる。

それに気づいた袴田が“あぁ…”と意味深に笑った。
「ほんっと、モテモテだよねー(笑)
店に来る客や、本社の女性社員にも人気でさ。
あ、安心してね!
オーナーは、丁重に断ってるから!
“ごめんね、僕には大切な恋人がいるから”って!」

「そうですか……!
……/////」

「………」

「……/////」

「…………ねぇねぇ、オーナーはほっておいてさ、俺とお茶でもする?」

「え?」

「絆奈ちゃん、可愛いなって思ってたんだ!」
袴田の顔が近づいてくる。
那王程はないが、容姿の整った顔に、絆奈の胸がドクンと鳴った。

「//////え?いや…あの━━━━━━━」
「ダメだよ……!!」

後ろから声がして、振り返ると那王が立っていた。

「那王く……」
「絆奈、おいで?」
両手を広げ、微笑んでいる那王。

そして、袴田が耳打ちしてきた。
「ほら、行かないと!」

「袴田さん…」
「ね?
オーナーの女は、君だろ?」

微笑み言う袴田に、絆奈も微笑んで那王の元に駆けていった。
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