愛でられて、絆される
那王は素早くハンカチを絆奈の口元に当てさせ、換気扇を回し、全ての窓を全開にした。
そして絆奈を抱き上げ、窓側に移動する。

「ごめんね…」

「気分は!!?」

「大丈夫…」

「良かった…!
とりあえず、病院に行こうね」

「え?そこまでないよ?
大丈夫だよ」

「でも、煙吸ってるでしょ!?」

「ほんとに、大丈夫!
たまたま那王くんが帰ってくる前に、焦がして一気に煙が充満したの。
だからほとんど煙吸ってないから。
ほら、今日から“婚約者”になったでしょ?
お祝いしたくて、ステーキとケーキを焼いてたの。
そしたら、フライパンに一気に火が上がって、パニックになって肉は焦がすし、オーブンのタイマーも設定を間違ってスポンジも焦がしちゃって……
同時に焦がしたから煙が上がったの。
ちょうど、タイミング良く那王くんが帰ってきてくれたから」

「そっか……」

「慣れないことするもんじゃないね…(笑)
ごめんなさい……」

「ううん。
でも良かったぁ……
ほんと、焦った!!
火事かと思ったから」

「だよね…ごめんね…」

「無事で…良かった……絆奈に何かあったら…僕…どうにかなる……」
そう言って抱きしめた那王は、震えていた。
絆奈も、那王にしがみつくように抱きついた。


それから一緒に片付けて、遅い夕食をとる那王と絆奈。
デリバリーのピザを食べていた。

「…………ほんと、ごめんね」
「もういいって!」
シュンと落ち込んでいる絆奈。
那王が向かいから手を伸ばし、ゆっくり頭を撫でる。

「うん…ありがとう…」
「ん。ほら、笑って?
僕は、絆奈の笑顔も大好きなんだから!」

「うん…!」
那王に向き直り、微笑んだ。
那王も微笑み、頭を撫でていた手を頬に滑らせた。

「好きだよ、絆奈」
「私も、那王くんのこと好き」

「絆奈……もう…慣れないことはしないで?」
「うん」
頬を撫でられ、絆奈はその那王の手に頬をすり寄せた。

「ほんと、生きた心地しないから………」

那王の顔が近づいて来て、絆奈もゆっくり目を瞑る。
二人の口唇が重なった。


「絆奈はもう、僕の全てなんだから━━━━━」
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