愛でられて、絆される
そして、夜が明けて━━━━━

絆奈は早朝から、那王に弁当を作っていた。
「確か……使い捨てのお弁当が……あ!あった!
取っておいて良かったぁー」

新幹線で行くと言っていた。
なので、弁当を食べる余裕はあるだろう。

「━━━━━よし!出ー来た!
あとは、朝ごはんを作らなきゃ!」

朝食の準備に取りかかろうとすると、背後で“フフ…”と那王の笑い声が聞こえてきた。

「あ!那王くん!?
……………も、もしかして…また?」

「うん、聞いてた!(笑)
相変わらず、可愛いね!」
そう言って、後ろから抱き締めてきた。

「もう!恥ずかしいんだから、もっと早く声かけてよー」

「やだー!
だって、可愛いんだもん!」


それから一緒に朝食を作って食べ、那王がスーツケースをゴロゴロして玄関に向かった。

「那王くん、気をつけてね」

「うん。
絆奈、寂しかったらいつでも連絡してきていいからね!
その時出れなくても、絶対折り返すから。
我慢はしないこと!いい?」

「うん。わかった。
でも“寂しかったら”なんて言われたら、頻繁に連絡しちゃうよ?」

「いいよ。
頻繁にしておいで?
“全部、受け止めるから!”」

「ありがとう!
その言葉だけでも、安心する!」

「じゃあね。
僕からも、連絡するからね!」

「うん!
行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」

チュッとキスをかわして、小さく手を振り合った。

「━━━━━よし!」
絆奈も気合いを入れ、仕事に向かった。


スーツケースをゴロゴロしながら、駅へ向かう那王。
片手には絆奈が作った弁当が下がっている。

全て捨てられるように、紙の弁当に割り箸、紙袋に入れている。
そして━━━━━

「フフ…今日は、手紙が入ってる!」
紙袋から見える、水玉模様の手紙。
それを見て、顔をほころばせた。

駅に着き、新幹線に乗り込んで、早速手紙を開けた。
「ん?手紙…と、500円玉?」


【なおくんへ
仕事、今日もお疲れ様!
お弁当、もし新幹線の中で食べれたら食べてね!
全部使い捨てなので、そのまま捨ててもらって大丈夫です!
(あ、この手紙は取っておいてほしいな!)
飲み物は、同封してる500円でお茶を買ってね!
二本分はあるよね?
水筒は飲んだ後が邪魔かなと思ったので。
あー、この手紙を書いてる今も寂しいよー!
でもなおくんも頑張ってるので、私も頑張るね!
なおくん、大好きです!
じゃあまた、寂しくなったら連絡します!
絆奈♪】

那王は、文字をなぞった。

(でも、お茶を払うお金くらいあるのに……(笑)
絆奈らしいなぁー!)

益々好きになる━━━━━━

思わず那王は、顔がにやけていた。
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