愛でられて、絆される
一方の絆奈。

できる限り、那王のことを考えないようにして仕事に取り組んでいた。

でないと、寂しくて本気で泣きそうになるからだ。

「今日はやけに張りきってんなぁー」
島山が声をかけてきた。

「え?そんなことないですよ?」

「そうか?
なんか、いつもと違う」

「そ、そうですか?」
(そんなにわかりやすいのかな?私…
あ、でも、那王くんにも“わかりやすい”ってよく言われるかも?)

「まぁ、張りきり過ぎて失敗すんなよ?」
絆奈の頭をポンポンと撫でて、去っていく島山。

「………」
(那王くん、今何してるのかな?
休み時間に連絡しちゃおうかな?)

「…………いやいや、ダメダメ!
こんなすぐに連絡したら、後がもたなくなるし…」

悶々と考えてしまい、思わず声に出てしまう。

「━━━━━何がダメなの?」
背後から声が聞こえて振り向くと、岸峰が立っていた。

「え?あ…岸峰さん?」

「なんか、あった?」

「へ?」

「由利原さんと」

「え?いえ、何も…」

「そう?なんかあった顔してるから」

「え?え?」
(岸峰さんにまでバレてる…)

「フフ…何もないならいいんだけど。
あ、そうそう!
今日、仕事終わりあいてる?」

「あ、はい!あいてます!」
思わず、食いつくように言った絆奈。
那王がいない夜をどう過ごそうか考えていたからだ。

「フッ…そんな食いつかなくても……(笑)
見て、フレンチの招待券を貰ったの!
一緒にどうかなって!」

「わぁー、素敵ですね!
でも、いいんですか?
彼氏さんと行った方がいいんじゃ……」

「大丈夫!
彼、最近忙しいみたいでなかなか時間がなくて。
期限がなくなってきたの」

「そうなんですね…
じゃあ…お言葉に甘えて!」


仕事終わりにフレンチ店に向かった、絆奈と岸峰。

「素敵ですね!
景色も綺麗だし!」
「そうね!」

「なんか、悪いな……」
申し訳なさそうに肩をすくめる、絆奈。

「ん?」

「やっぱ、彼氏さんと来たかったですよね……」

「そりゃね…
あ!一橋さんに譲れば、よかったね!」

「え?」

「由利原さんと来れたでしょ?」

「あ…/////」

「フフ…顔が赤くなった!」

「……/////
でも、彼、今日から出張に行ってるんです」

「そうなの?」

「はい…」

「………じゃあ、今日家来る?」


「え━━━━━━」
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