愛でられて、絆される
「━━━━お邪魔します…!」
岸峰のマンションに向かった、絆奈。

「どうぞ~!
座って!今、紅茶淹れるから!」

「はい!
わぁー、素敵な部屋ですね!」
所々に花が生けてある、落ち着いた部屋。
岸峰の性格が現れた、心地いい空間だ。

絆奈は部屋内を見渡し、歓喜の声をあげた。

「フフ…
はい、どうぞ?
あとこれ。
このスウェットと下着使って?
下着は使い捨てなんだけど、結構いいよ!」
「ありがとうございます!」


紅茶を飲みながら、話に花を咲かせる。
「━━━━へぇー!由利原さんって、結構心配性なんだね(笑)」

「はい(笑)
とにかく、一人で出歩くなって言うんです!」

「そっか(笑)
でも、それわかるなぁ~」

「えー、そうですか?
岸峰さんみたいな美人さんだったら、心配するのもわかるんですよ?」

「フフ…
一橋さん、自分が思ってるよりも綺麗よ!
由利原さんと付き合うようになってからは特に!」

「……/////そ、そうですか…/////
ありがとうございます/////」

「フフ…やっぱ、可愛いなぁー!
その可愛いところが堪らないんだろうなぁ~由利原さん。
きっと今も、寂しがってるんじゃない?(笑)」



岸峰の言う通り、那王はスマホを握りしめて唸っていた。
「今、絆奈は何してるかな?
まだ、寝てはないよな…?
どうして一度も、連絡がないんだろう……」

朝、自宅で別れてから“一度も”絆奈から連絡がない。

正直、想定外だ。

控え目な絆奈でも、昼休みや仕事終わりに連絡をしてくると思っていたから。

絆奈は、僕がいなくても寂しくないのだろうか?

僕は死にそうなくらいに寂しくて、声が聞きたくて、会いたくて堪らないのに…………

那王は、スマホ画面をタップしメッセージを送った。
【今、何してる?】

本当は声が聞きたい。
でも今電話すると、狂おしい思いをぶつけてしまいそうだから。

“既読”にさえならない。

どうしていつも、僕だけがこんなに苦しい思いをしているの?


“オーナーは、絆奈ちゃんに絆されてますよね!”

従業員達が最近よく言う言葉。


「確かに……」

那王は、自嘲気味に笑った。
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