愛でられて、絆される
それから三日間は岸峰が夕食を付き合ってくれて、なんとか寂しい思いをせずに済んだ絆奈。

夜も、那王と寝るギリギリまで電話で話していた。

そんな四日目の仕事終わり。
明日は、那王が帰ってくる。
心なしか、気持ちも軽い。


しかし━━━━━

「━━━━あれ?一橋?帰んないの?」
職場の前で立っていた絆奈に、島山が声をかけてきた。

「あ、先輩。お疲れ様です」

「お疲れ!どうした?」

「あ…雨が止むのを待ってるんです」

「は?お前、傘持ってんじゃん!」

「あ、そうじゃなくて……
雷、鳴りそうだから」
そうなのだ。
夕方から雨が降り続いていて、今もかなり降っていた。
雷が鳴ってるわけではないが、帰っている途中で鳴るのではないかと不安で動けずにいたのだ。
ちなみに、今日は岸峰は休みだ。

「大丈夫だろ。このくらいなら」
空を見上げて、微笑む島山。

「………」

「…………雷、怖いの?」

「あ、はい…
亡くなった祖父の家が山の上で…
その家の近くの木に、雷が落ちたことがあるんです。
それから、怖くて……」

「だったら、由利原さんに迎えに来てもらえば?」

「あ、彼は今、出張中なんです」

「じゃあ、俺が送ってやるよ!」

「え?でも…
先輩の家とは逆だし…
それに今日は、ファミレスかどっかで時間を潰そうかと……」

「は?なんで?」

「一人で家にいるのは、怖いので…」

「………じゃあ、付き合ってやるよ」

「え?ダメですよ!」

「なんで?」

「もう、先輩には迷惑かけられないし」

「あー“あの事?”
別に、お前のせいじゃないだろ?」

「でも、彼のせいで先輩は怪我を……」

「お前だって、被害者だろ?
…………つか、もうその話はなし!」

「はい…そうでした…!」

「つうことで、行くぞ!」
島山と居酒屋に向かった、絆奈。


「━━━━━酒でも飲む?
もちろん、奢ってやっから!」
メニューを見せながら言う。

「あ、お酒はちょっと……」

「ん?」

「悪酔いするので…私…/////」

「へぇー!どんな悪酔い?(笑)
酔わせてみてぇな(笑)
…………なんてな!
じゃあ、ノンアルで乾杯だ!」
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