愛でられて、絆される
そして、マンションに着き━━━━━

「先輩、ありがとうございました!」
「ん!じゃあな!」

島山と別れて、マンションに入る。
エレベーターで上がり、玄関の鍵をさす。

「え………なん…で…開いてるの?」

鍵が開いているのだ。

「………」
(え?え?確かに、鍵閉めたはず!
今は一人だし、三回も確認したもん!)

じゃあ……じゃあ……

「━━━━━━!!!!?」

絆奈の脳裏に“ある事が”蘇る。


咄嗟に、島山に電話をかけた。
『どうしたー?』

「せ、先輩!!?
鍵、開いて、ま、また、あの人が━━━━━」

『は?
一橋!!?
落ち着け!!
あいつは今、刑務所のはずだぞ!?』

「え?で、でも……」

『とりあえず、そっちに行くから!!
お前も、下に下りてこい!!』

通話を切り、絆奈はエレベーターに乗り込んだ。


マンションを出ると、島山が駆けてきた。
島山を見て、絆奈は安心したようにへたりこんだ。

「一橋!!?」
「あ…あ…」

「落ち着け!!大丈夫だから!!な?」
絆奈を抱き締め、背中をさする。

島山に支えられながら、自宅に戻る。
島山は絆奈を背中に隠し、ゆっくり玄関のドアを開けた。

カチャ……と音をさせて開く。
男性用の靴が、揃えられていた。

「え……この靴…」

「━━━━━絆奈!!おかえ………え……!?」
そこには、那王がいた。

「由利原…さん?」
「那王くん、なん…で……?」

三人揃って、目を見開き驚愕していた。



━━━━━━━リビングで対当している、那王、絆奈、島山。

「今日、島山さんといたの?」
「うん。今日、天気悪くて雷が鳴りそうだったから、先輩が付き合ってくれたの」

「そう…」
「那王くん、連絡してくれたら良かったのに……」

「うん…そうだよね……
でも、絆奈を驚かせたくて……」
「そっか…」

「あの、さ…」
「うん」

「どうして、島山さんとなの?
昨日まで、岸峰さんと一緒だったでしょ?
どうして、よりによって、島山さんなの?
それに、どうして、わざわざ玄関前まで一緒なの?」

「岸峰さん、今日は仕事休みで。
岸峰さんはね、付き合うよって言ってくれたの。
でも、休みなのに申し訳なくて……
それに、明日は那王くん帰ってくるしと思って断ったの。
でもいざ帰ろうとすると、雨降りだして……
しばらくFLOWER AVEで時間潰して、ファミレスで雨が落ち着くまでいようと思ってたら、先輩が声をかけてきてくれたの。
玄関に来てくれたのは……その…鍵が開いてたから、怖くて先輩に一緒に来てもらったの」

「………そう…
怖くて、咄嗟に“島山さんに”助けを求めたんだね………」

「あ…そ、それは………!!」


「━━━━━由利原さん、なんか疑ってます?」
切なく見つめる那王に、島山が真っ直ぐ見て言った。

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