愛でられて、絆される
「ごめんね、那王くん。
今日鍵が開いてるのがわかった時、あの事思い出してパニックになったの。
だから咄嗟に、先輩に………」

「ううん。
もう、いいよ。
そんなことがあったのなら、島山さんに助けを求めちゃうよね?」

「ごめんね…」

「もう、謝んないで?
大丈夫だから!」

「ごめんね…ごめんね…」
顔を覆い、謝罪を繰り返す絆奈。
那王は、そんな絆奈を包み込むように抱き締めた。

“あとは、二人で乗り越えることだから”

それから島山がそう言い残し、マンションを後にした。



「━━━━島山さんって、良い人だね」
「え?」

ソファに並んで座っている那王と絆奈。
いつものように絆奈を愛でながら、那王がポツリと言った。

「うん。
良くしてくれるよ。もちろん、みんなにね!
それに誰に対しても、同じ態度で接する人なの」

「そっか。
絆奈が憧れるのがわかるなぁー」
切なく笑う那王。

「………」
絆奈は、那王の頬を包み込んだ。

「え?絆奈?」

「でも、私の一番は“最初から”那王くんだよ!」

「絆奈……
━━━━━━んんっ!!」
そして、絆奈からキスをした。

次第に深くなって、熱くなっていく。

「那王くん…」
「絆奈…」

「那王く…ん…好き…」
「僕も…大…好き……」

「好き…好き……」
「ん…僕も……」

「だから…そんな、壊れそうに泣かないで?」
向き直り、絆奈も泣きそうに言ってくる。

「え?泣いてないよ?」

「泣いてるよ?那王くん」

「え……僕、泣いて………る…?」

那王は、泣いていた。

「今度から、那王くんに一番に頼るからね」

「うん」

「……………那王くん」

「ん?」

「おかえりなさい!」

「あ…」
「ちゃんと、言ってなかったなって!」

「フフ…うん!ただいま!」

「早く、帰ってきてくれてありがとう!」

「うん!
でも、僕の方が我慢できなったんだ!
絆奈に、会いたかった。
寂しくて、苦しかったから。
冗談抜きで……!」

「フフ…」

「笑い事じゃないよ?
大変なんだからね!
僕、絆奈に絆されてるんだから!」

「フフ…」

「絆奈!
笑わないで!!」

「フフ…フフフ…」

絆奈は、笑いが止まらない。
大好きな那王に、求められていることが嬉しくて堪らない。

絆されてるのは、自分だけじゃない。

同じくらい那王も絆されている。

そう思うだけで、幸せが込み上げてくる。

「━━━━━━もう!絆奈!」
そのまま、ソファに押し倒された。


「今日、寝かさないからね━━━━━」
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