愛でられて、絆される
那王は、嫉妬していた━━━━━━━


「…………んん…那王く…」

「ダメ…絆奈……まだまだ、終わらないよ?」

「も…身体…もたな……お願…」

「ダメ…
寝かさないって言ったよね?
好きで、好きで、もう…おかしくなりそうなんだ……
もっと沢山、愛でさせて?」


頭ではわかっている。

絆奈と島山の間にあるのは“信頼関係”なのだと。
あんな辛いことがあったんだ。
それを支え、助けてくれた島山を咄嗟に頼るのは当たり前だ。

那王とまだ再会する前の出来事だし、それはどうしようもないことだ。

でも………どんな時でも“一番に”頼られたい。
絆奈の“一番に”なりたい。


「絆奈……もう…僕以外に頼らないで?
僕だけにして?
絆奈は…僕を一人にしないで━━━━━━」


僕は既に、絆奈しかいらないんだから━━━━!



「━━━━那王くん」
漸く那王が落ち着き、今は那王の腕枕で頭を撫でられている絆奈。
見上げて、名前を呼ぶ。

「ん?」

「なんか、あった?仕事とかで」

「え?」

「なんか最後、辛そうだったから」

「そうかな?」

「“一人にしないで”って言ってたでしょ?」

「あ…あぁ…
ちょっと、昔のことを思い出して……」

「昔のこと?」

「うん。
絆奈と離れてすぐ…ってゆうか、高校生の頃のこと」

「え?」

「良い高校生活じゃなかったんだ、僕」

「そう…なの?」

「うん。
中学の時からガラッと変わったからね。
環境も、生活も、全部……」

「そうだったの?」
(そんな感じ、全くしない……)

「荒れてたんだよ?僕」

「え?荒れてた?」

「うん。
髪の毛は金髪で、煙草も吸ってた」

「え………」
(嘘ーーー!!!
全然、想像つかない)

「フフ…絆奈、ひいてる(笑)」

「だ、だって…
え?でも待って!
S高って、校則厳しいでしょ?」

那王が入学した高校は、いわゆるエリート高。
校則が厳しく、偏差値も高い。
その代わり、将来が約束された高校なのだ。

「あー、高一の夏に退学したんだ。
僕は、C高卒だよ」

「え?C高……」
対するC高は、正反対のガラの悪い不良高。
その名を聞くだけで“落ちこぼれ”と言われる程だ。

絆奈は、完全にひいていた。
そして同時に、切なくなっていた。


那王くんに、何があったの━━━━━━?
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