愛でられて、絆される
「━━━━これなんかどうかな?」
那王が、絆奈の身体にワンピースを当てる。

「わぁー、可愛いね!」

「フフ…気に入ったみたいだね!
じゃあ、これにしよう!」

パーティードレスのままの絆奈に、那王が服を買ってくれようとしていた。
「でもほんとにいいの?
一回帰って着替えてからでも…」

「いいの!
なんでもしてあげたいって言ったでしょ?」

「うん、ありがとう!」

「いいえ!
じゃあ…店員を呼んで、ここで着替えて出ようね!
僕、呼んでくるからここで待ってて」
そう言って、店員を探す那王。

絆奈は、他の服を見ていた。
(可愛い服ばっかだな!
このスカートも可愛い~
━━━━━━ん?んん?
29,800円?
は?この、スカートが?
え?え?ちょっと待って!
じゃ、じゃあ、このワンピは?
━━━━━━!!!!?
44,700円!!!?)

絆奈は急いで、那王の元に駆け寄った。
「那王くん!!」

「ん?ちょっと待っててね。
今、他を接客中みたいなんだ」

「いや、その…せっかくだけど、違う服がいいかなって思って……」

「え?
わかった。でも、これも似合ってるからこれも買おうよ!」

「え!?」
(そうじゃなくて!!
どうしよう…どんな風に言えば、傷つけずに買わせずに済むのー)

「………」

「あ、あの!那王くん、やっぱり私…このドレスのまま━━━━━」

「絆奈」
鋭い声になる那王。
顔は微笑んでいるが、なんだか恐ろしい。

「へ?」

「僕、ホテルで何て言ったかな?」

「え?」

「思い出して?
僕、何て言った?」

“僕に気を遣わないこと”

「気を…遣わない…」

「うん。
はい、買おうね!絶対、似合うよ!
ほら、試着室の前に行ってて!」

「うん、ありがとう」

試着室の前に戻りながら、先程見ていたスカートに目がいく。
(やっぱ、可愛いな!
━━━━━ん?このカーディガンも可愛い!
でも、高い……)
手に取って見てみる。

すると、後ろから「絆奈!」と呼ばれた。
絆奈はスカートとカーディガンを元に戻し、急いで試着室に向かった。

「脱いだお洋服は、こちらをお使いください!」
店員が紙袋を受け取り、試着室に入ったのだった。
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