涙は甘いケーキに溶けて
三ヶ月前、営業に出た先で、彼は大学時代に所属していたサークルの一つ下の後輩と偶然再会した。それをキッカケに、彼女に誘われてグループで飲みに行くようになり、彼女と頻繁に連絡を取り合うようになり。私よりも彼女といるほうが楽しいと思うようになっていったそうだ。
彼女とは一ヶ月前から私の存在を隠して付き合っていて、そのことを私にも彼女にも言えないままに、クリスマス・イヴの予定がダブルブッキング。
どうしようもなくなった結果、土壇場になって私との関係を切ることにしたらしい。
でも本当は、かなり早い段階で私と別れることを決めていたのだろう。
その証拠に、彼が予約してくれていたはずのレストランに、私たちふたりの席は用意されていなかった。
約束の時間になっても現れない彼の代わりに、「遅れる」という連絡を入れたら、店のスタッフが困った声で「申し訳ありませんが、ご予約は入っていないようです」と、教えてくれたのだ。
「最悪……」
枕に顔を押し付けながら、低くつぶやく。