涙は甘いケーキに溶けて

「何言ってんの? 酔ってる?」

「酔ってないよ。言ったじゃん、残業してたって。それより、入れてよ。早くケーキ食べよ」

「何言ってんのよ。私は……」

「あ、ケーキはもうあいつと一緒に食べちゃった?」

 高瀬の言う「あいつ」が、数時間前に別れを告げられた彼のことを指しているのがわかって、胸の奥が軋む。

 ぎゅっと唇を噛んで俯くと、高瀬が無遠慮に私の頭を撫でてきた。

「意地悪言ってごめん。一緒にケーキ食べようっていうのは建前で。もしかしたら泣いてんじゃないかと思って。本当は、あいつから相談されてて全部知ってた」

 驚いて顔をあげると、眉を寄せて困ったように笑った高瀬が、私の頭を胸に引き寄せる。彼とは違う、高瀬の腕の力強さに、ドクンと胸が鳴った。
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