【電子書籍化】このたび、乙女ゲームの黒幕と婚約することになった、モブの魔法薬学教師です。
ありがたいことに、カスタニエさんが生地を準備室まで運んでくれた。
やはり騎士は頼もしい。
「本当にありがとうございます。私では運べないので助かりました」
「力仕事が必要な時はいつでも呼んでください」
そんな頼もしいことを言ってくれたカスタニエさんが部屋から出て行くと、妖精たちが物陰から姿を現わす。
おやゆび姫みたいな大きさの彼らは臆病で、慣れるまでは姿を現してくれない。だけど好奇心が旺盛で、珍しいものがあるとこうやって出てくるのである。
「みんな、お願いしたいことがあるの。服を作れる人はいる?」
『『『いる~』』』
数匹の妖精たちがわらわらと前に出て来た。
「今から描く絵のような服を作りたいの。一人じゃ大変だから力を貸してくれない?」
本当は仕立て屋に頼みたいところだけど、あまりにもお金がかかりすぎるとみんなに贈った時に職員室で問題になってしまう。
服を作るなんてやったことないけど、昨日図書館で調べたからそれでやってみるしかない。
『メレンゲのお菓子一年分でいいよ~』
「わかったわ」
妖精との取引って最初はどんな対価を吹っかけられるのかビクビクしていたんだけど、意外と可愛いものなのよね。
紙にジャージの絵を描いていくと、それを元に妖精たちが型紙を用意してくれて、生地のカットまでサクサクと進めてくれた。
初めて見る型の服だから興味津々で、『へんな服~』って言いながらも作業してくれる。
「小娘、何を作るつもりなんだ?」
「芋ジャージよ」
「芋ジャージ? 食べ物みたいに聞こえるが、布で作るのか?」
「服よ。みんなが身分に縛られることなくお話しできるように願いを込めて作るの」
ジルは服ができていく様子を見守っていたけど、だんだん飽きてきたようで、椅子の上で丸くなって眠り始めた。
作業は思った通り難しく、私がまだ一着目を作っている間に妖精たちはどんどん完成させていく。
みんな恐ろしく手際がいい。針子でもこんなに早くは作られないはず。
この子たち、仕立て屋で働いたらそれなりに給料をもらえるんじゃないだろうか。
しまいには私が取り掛かっている服を見て『へたくそ~』っと言って直してくれる。
悔しいが彼らの言う通りだ。
だって私、初心者なんですもの。
「小娘、早く寝ろ。もう外が白んできてるぞ」
目をしょぼしょぼとさせていると、ジルが声をかけてくれた。
柱にかかる時計を見たら、信じられないことにもう朝の4時だ。
「心配してくれてありがとう。もう少しでできるからその後にちょっとだけ休むわ」
「なっ?! 心配なぞしていない! お前が起きてると明るくて眠れないからだ」
ジルはそう言って肉球でバンバンと椅子を叩く。明らかに照れ隠しだ。なんともわかりやすいツンデレに頬が緩みそうになる。
見張りだけど、口が悪いけど、こうやって心配してくれるからジルのことは好きだ。
それに、可愛い猫だしね。そんなことを言ったら怒られるから言えないけれど。
「で、きた……!」
最初からずっと作っていたヨレヨレの一着を完成させると、疲れがドッと押し寄せてきた。そのまま机に突っ伏したくなるが、ここは準備室だ。シャワーを浴びたいし仮眠もとりたい。
「みんな、メレンゲのお菓子は放課後に持っていくからね」
『忘れないでね~』
妖精さんたちはとっても厳しく、約束を破れば三代先まで祟ってくるという。
今日のお昼にでも購買部に走っていこう。
上手く働かない頭でそう考えながら、ジルと一緒に職員寮に帰った。
やはり騎士は頼もしい。
「本当にありがとうございます。私では運べないので助かりました」
「力仕事が必要な時はいつでも呼んでください」
そんな頼もしいことを言ってくれたカスタニエさんが部屋から出て行くと、妖精たちが物陰から姿を現わす。
おやゆび姫みたいな大きさの彼らは臆病で、慣れるまでは姿を現してくれない。だけど好奇心が旺盛で、珍しいものがあるとこうやって出てくるのである。
「みんな、お願いしたいことがあるの。服を作れる人はいる?」
『『『いる~』』』
数匹の妖精たちがわらわらと前に出て来た。
「今から描く絵のような服を作りたいの。一人じゃ大変だから力を貸してくれない?」
本当は仕立て屋に頼みたいところだけど、あまりにもお金がかかりすぎるとみんなに贈った時に職員室で問題になってしまう。
服を作るなんてやったことないけど、昨日図書館で調べたからそれでやってみるしかない。
『メレンゲのお菓子一年分でいいよ~』
「わかったわ」
妖精との取引って最初はどんな対価を吹っかけられるのかビクビクしていたんだけど、意外と可愛いものなのよね。
紙にジャージの絵を描いていくと、それを元に妖精たちが型紙を用意してくれて、生地のカットまでサクサクと進めてくれた。
初めて見る型の服だから興味津々で、『へんな服~』って言いながらも作業してくれる。
「小娘、何を作るつもりなんだ?」
「芋ジャージよ」
「芋ジャージ? 食べ物みたいに聞こえるが、布で作るのか?」
「服よ。みんなが身分に縛られることなくお話しできるように願いを込めて作るの」
ジルは服ができていく様子を見守っていたけど、だんだん飽きてきたようで、椅子の上で丸くなって眠り始めた。
作業は思った通り難しく、私がまだ一着目を作っている間に妖精たちはどんどん完成させていく。
みんな恐ろしく手際がいい。針子でもこんなに早くは作られないはず。
この子たち、仕立て屋で働いたらそれなりに給料をもらえるんじゃないだろうか。
しまいには私が取り掛かっている服を見て『へたくそ~』っと言って直してくれる。
悔しいが彼らの言う通りだ。
だって私、初心者なんですもの。
「小娘、早く寝ろ。もう外が白んできてるぞ」
目をしょぼしょぼとさせていると、ジルが声をかけてくれた。
柱にかかる時計を見たら、信じられないことにもう朝の4時だ。
「心配してくれてありがとう。もう少しでできるからその後にちょっとだけ休むわ」
「なっ?! 心配なぞしていない! お前が起きてると明るくて眠れないからだ」
ジルはそう言って肉球でバンバンと椅子を叩く。明らかに照れ隠しだ。なんともわかりやすいツンデレに頬が緩みそうになる。
見張りだけど、口が悪いけど、こうやって心配してくれるからジルのことは好きだ。
それに、可愛い猫だしね。そんなことを言ったら怒られるから言えないけれど。
「で、きた……!」
最初からずっと作っていたヨレヨレの一着を完成させると、疲れがドッと押し寄せてきた。そのまま机に突っ伏したくなるが、ここは準備室だ。シャワーを浴びたいし仮眠もとりたい。
「みんな、メレンゲのお菓子は放課後に持っていくからね」
『忘れないでね~』
妖精さんたちはとっても厳しく、約束を破れば三代先まで祟ってくるという。
今日のお昼にでも購買部に走っていこう。
上手く働かない頭でそう考えながら、ジルと一緒に職員寮に帰った。