【電子書籍化】このたび、乙女ゲームの黒幕と婚約することになった、モブの魔法薬学教師です。
「みんな、モーリュのこと教えてくれる?」
『『『お菓子くれるならいいよ~』』』
ノエルが帰った後、準備室に行って妖精たちに声をかけると、ぞろぞろと出てきてくれた。
ちなみに、今回はチョコレートをご所望のようで。
明日の朝一番に買いに行かないといけないわね。
「この国で採れる場所はあるかしら? 知っていたら教えて欲しいんだけど」
『フィニスの森〜』
「あらっ、意外と近くにあるのね」
あんまりにも簡単に見つかりそうで拍子抜けしちゃう。
もうバッドエンドを回避したも同然ね、なんて浮かれていたら。
『人間は行けない場所だよ~』
『裏フィニスって呼ばれてるとこ~』
『フィニスの森だけどそうじゃないの〜』
瞬時に叩き落とされる。
裏フィニスって、ゲームには全く出てこなかった名前なんですけど?
それに、怪しい響きが満載なんですけど?
近くで話を聞いていたジルはさっと眉根を寄せた。
「うげっ、聞きたくない名前を聞いてしまったな」
耳はピンと後ろに倒れてしまっていて、よほど苦手な場所のようだ。
「裏フィニスって、どういう場所なの?」
『えーっとね、精霊が住んでる場所〜』
『あの世に近いの~』
『妖精もあんまり行かないよ〜』
確かに、人間は近づけなさそうな場所だ。
「困ったわね。なにがかんでもモーリュが必要なのに人間が行けない場所だなんて」
ゲームの中のノエルはどうやって手に入れたのかしら。彼の回想はほんの少ししか紹介されないから情報が少なすぎるわ。
「なにか方法はないかしら?」
『変身したらレティシアもいけるよ~』
「本当に? 人間は行けないんでしょ?」
『人間以外になればいいの~』
「なるほど、人間の体では耐えられない魔力が働いているのね」
妖精の住む世界もまたそのような力が働いていて、人間が行けば体のつくりが変わってしまう、と言い伝えられているんだけど、裏フィニスもそういう場所なのかもしれない。
「変身薬を使って変身するしかないわね」
「やい、小娘。こっちを見るな」
ジルは怒ってしっぽをパタパタさせている。
私が思っていることが分かっているようだ。
「毛の一本や二本くらいケチらずにちょうだいよ」
「断る! そう言ってハゲにされたら困るからな!」
「ちゃんと気をつけるって~」
頼み込んでもジルは聞いてくれない。
ケチな奴め。
「猫になってみたかったのにな~」
『それならケットシーのヒゲいる~?』
妖精が猫のヒゲを取り出した。
前に一緒に遊んでいた時に抜けてしまったものらしい。
「あら、ありがとう」
『マシュマロ追加でいいよ~』
「くれるんじゃないのね」
小さな商人たちは抜かりない。
かくして、私は明日の朝一番にチョコレートとマシュマロを買いに行くことになった。
「フィニスの森に詳しい人はいる? 案内して欲しいんだけど」
何気なく聞いてみると、さっきまではきゃいきゃい言っていた妖精たちが一斉に黙ってしまって、部屋の中はしぃんとしてしまう。
「報酬は出すわ。土地勘がある人にいて欲しいの」
『僕たち詳しくないの~』
なるほど、あまり行かない場所だってさっき言っていたもんね。
どうしようかしら。きっと、私だけだと道に迷ってしまうわ。
『トレントなら知ってるかも~』
「ええ~っ?」
トレントといえば、この前フィニスの森に行った時にひと悶着あったから気まずいんだけど。それに、あっちは人間が嫌いって感じだったし。
『トレント、ロアエク先生のこと好き~』
『ロアエク先生のこと言ったら協力してくれる~』
『僕たち上手く交渉してあげる~』
「本当に?」
にわかに信じ難い話なんだけど、それでも可能性があるならかけてみるしかない。
「お願いするわ。早めに交渉して来てね」
『追加でビスケットとキャンディーね』
この小さな商人たちは、本当にちゃっかりしている。
一時間も経たぬ間に大量のお菓子を買う約束をさせられて、悪徳商法に引っかかってしまった気分だ。
案内役との交渉は彼らに任せるとして、残る問題はあと一つ。
「変身薬を作らなきゃいけないわね」
マズいし見た目も良くないから飲みたくないんだけど、この際、しかたがないのよね。うう……。
『『『お菓子くれるならいいよ~』』』
ノエルが帰った後、準備室に行って妖精たちに声をかけると、ぞろぞろと出てきてくれた。
ちなみに、今回はチョコレートをご所望のようで。
明日の朝一番に買いに行かないといけないわね。
「この国で採れる場所はあるかしら? 知っていたら教えて欲しいんだけど」
『フィニスの森〜』
「あらっ、意外と近くにあるのね」
あんまりにも簡単に見つかりそうで拍子抜けしちゃう。
もうバッドエンドを回避したも同然ね、なんて浮かれていたら。
『人間は行けない場所だよ~』
『裏フィニスって呼ばれてるとこ~』
『フィニスの森だけどそうじゃないの〜』
瞬時に叩き落とされる。
裏フィニスって、ゲームには全く出てこなかった名前なんですけど?
それに、怪しい響きが満載なんですけど?
近くで話を聞いていたジルはさっと眉根を寄せた。
「うげっ、聞きたくない名前を聞いてしまったな」
耳はピンと後ろに倒れてしまっていて、よほど苦手な場所のようだ。
「裏フィニスって、どういう場所なの?」
『えーっとね、精霊が住んでる場所〜』
『あの世に近いの~』
『妖精もあんまり行かないよ〜』
確かに、人間は近づけなさそうな場所だ。
「困ったわね。なにがかんでもモーリュが必要なのに人間が行けない場所だなんて」
ゲームの中のノエルはどうやって手に入れたのかしら。彼の回想はほんの少ししか紹介されないから情報が少なすぎるわ。
「なにか方法はないかしら?」
『変身したらレティシアもいけるよ~』
「本当に? 人間は行けないんでしょ?」
『人間以外になればいいの~』
「なるほど、人間の体では耐えられない魔力が働いているのね」
妖精の住む世界もまたそのような力が働いていて、人間が行けば体のつくりが変わってしまう、と言い伝えられているんだけど、裏フィニスもそういう場所なのかもしれない。
「変身薬を使って変身するしかないわね」
「やい、小娘。こっちを見るな」
ジルは怒ってしっぽをパタパタさせている。
私が思っていることが分かっているようだ。
「毛の一本や二本くらいケチらずにちょうだいよ」
「断る! そう言ってハゲにされたら困るからな!」
「ちゃんと気をつけるって~」
頼み込んでもジルは聞いてくれない。
ケチな奴め。
「猫になってみたかったのにな~」
『それならケットシーのヒゲいる~?』
妖精が猫のヒゲを取り出した。
前に一緒に遊んでいた時に抜けてしまったものらしい。
「あら、ありがとう」
『マシュマロ追加でいいよ~』
「くれるんじゃないのね」
小さな商人たちは抜かりない。
かくして、私は明日の朝一番にチョコレートとマシュマロを買いに行くことになった。
「フィニスの森に詳しい人はいる? 案内して欲しいんだけど」
何気なく聞いてみると、さっきまではきゃいきゃい言っていた妖精たちが一斉に黙ってしまって、部屋の中はしぃんとしてしまう。
「報酬は出すわ。土地勘がある人にいて欲しいの」
『僕たち詳しくないの~』
なるほど、あまり行かない場所だってさっき言っていたもんね。
どうしようかしら。きっと、私だけだと道に迷ってしまうわ。
『トレントなら知ってるかも~』
「ええ~っ?」
トレントといえば、この前フィニスの森に行った時にひと悶着あったから気まずいんだけど。それに、あっちは人間が嫌いって感じだったし。
『トレント、ロアエク先生のこと好き~』
『ロアエク先生のこと言ったら協力してくれる~』
『僕たち上手く交渉してあげる~』
「本当に?」
にわかに信じ難い話なんだけど、それでも可能性があるならかけてみるしかない。
「お願いするわ。早めに交渉して来てね」
『追加でビスケットとキャンディーね』
この小さな商人たちは、本当にちゃっかりしている。
一時間も経たぬ間に大量のお菓子を買う約束をさせられて、悪徳商法に引っかかってしまった気分だ。
案内役との交渉は彼らに任せるとして、残る問題はあと一つ。
「変身薬を作らなきゃいけないわね」
マズいし見た目も良くないから飲みたくないんだけど、この際、しかたがないのよね。うう……。