【電子書籍化】このたび、乙女ゲームの黒幕と婚約することになった、モブの魔法薬学教師です。
「……わかった。一日だけ休みをもらうよ」
ノエルは眉間から指を話すと、紅茶を一口啜る。
「もっと休んだ方がいいんじゃない?」
「風の日を休みにしたら空の日と月の日は週末だ。それで三日は休めるだろう」
「それならいいわ。職員寮の客室が使えるように申請を出しておくから」
基本的に学園に常駐している教師たちのために、職員寮には客間がある。
家族や友人が訪ねてきたときに泊められるようになっているから、たぶん私から申請したらノエルは泊まれるはず。
「一日だけ申請しておいて」
「残りの二日は、どうするつもりなのよ?」
「いい機会だからロアエク先生のところに行こうと思うんだ。妖精たちから聞いたんだけど、顔を見せに来いとトレントが言ってるらしい」
休日に会いに行きたいだなんて、やっぱり、ノエルにとってロアエク先生は大切な人なんだと思い知らされる。
そりゃあ、実の親のように思っている人だもんね。
疲れている時には会いたくなるのかも。
てっきりお休みにする三日間、ノエルがここに来るもんだと思っていただけに、なんだか寂しく思ってしまう。
「わかったわ。よろしく言っておいてね」
なにかお土産でも持って行ってもらおうかな、なんて思いながら返事をすると、ノエルがぎゅっと手を握ってくる。
「一緒に来てくれないか?」
「へ?!」
私が行ったらそれこそ、お邪魔するようなもんじゃないの?
どうしよう。
私もロアエク先生の教え子だから気を遣ってくれてるのかな?
「いいの? 先生とゆっくり話したいなら、私は行かない方がいいと思うけど」
「レティシアを婚約者として紹介したいから、来て欲しいんだ」
「こ、んやくしゃ……」
ノエルの言葉が急に、重くのしかかってくる。
彼に婚約者と呼ばれることにはもう慣れているんだけど、問題は、外ならぬロアエク先生にそう紹介してくれるってことだ。
先に説明しておこう。
ロアエク先生は、それはそれは聖母のように素晴らしい先生で、私も大好きな先生だ。たぶん、歴代のお世話になった先生方の中でもダントツだと思う。
だからなのかも、しれない。
愛情深く神聖なロアエク先生に、契約した婚約者として会うのが後ろめたい。
きっとノエルは契約のことを伏せるだろうけど、愛のない結婚をしたって、バレたらどうしよう、先生には知られたくないな。
「婚約者がなにか、問題でも?」
「ひいぃぃぃぃ。なんでもございません!」
私のためらいを感じ取ったのか、ノエルが微笑みに圧を込めてくる。
そんな脅しをしてこなくったって、ちゃんと行くわよ。私だってロアエク先生の元気な姿を見たいんだもの。
「それならよかった。空の日に行くことにしよう」
「わかったわ」
「一日泊めてもらうつもりだから、準備しておいてね」
「え、泊まるの?! 私も?!」
泊まりとなると、ノエルと一日中一緒にいる、ことになる。
なんだなんだ、どういうつもりなの?
そっと彼の顔を見てみると、口の端を微かに持ち上げて妖艶な表情をしている。
黒幕だ。
その顔、ゲームの中のノエルがしてるの見たことがある。いかにも黒幕って感じの顔だなって思いながら見た記憶あるもん。
「ちゃんと休んでいるのか見張るつもりだと聞いたけど?」
「確かにそう言ったけど……」
まさかノエルについて行って見張ることになるだなんて想像もしていなかったけど、【なつき度】を上げるチャンスだし、ついていこう。
「そうね、ノエルがちゃんと休んでいるか、しっかりがっつり見ておくわ」
「一体なにを考えているのかわからないけど、よろしく頼んだよ」
ノエルは呆れたような顔をしてくるけど、その声はどことなく嬉しそうだった。
私たちは妖精に頼んで、ロアエク先生とトレントに遊びに行くことを伝えてもらうことにしたんだけど。
『おーけー。マフィンでいいよ~』
「僕が買いに行こう」
商売人の彼らはタダでは動いてくれなくて、依頼料としてマフィンを要求されたもんだから、ノエルが購買部まで買いに行くことになった。
ノエルは眉間から指を話すと、紅茶を一口啜る。
「もっと休んだ方がいいんじゃない?」
「風の日を休みにしたら空の日と月の日は週末だ。それで三日は休めるだろう」
「それならいいわ。職員寮の客室が使えるように申請を出しておくから」
基本的に学園に常駐している教師たちのために、職員寮には客間がある。
家族や友人が訪ねてきたときに泊められるようになっているから、たぶん私から申請したらノエルは泊まれるはず。
「一日だけ申請しておいて」
「残りの二日は、どうするつもりなのよ?」
「いい機会だからロアエク先生のところに行こうと思うんだ。妖精たちから聞いたんだけど、顔を見せに来いとトレントが言ってるらしい」
休日に会いに行きたいだなんて、やっぱり、ノエルにとってロアエク先生は大切な人なんだと思い知らされる。
そりゃあ、実の親のように思っている人だもんね。
疲れている時には会いたくなるのかも。
てっきりお休みにする三日間、ノエルがここに来るもんだと思っていただけに、なんだか寂しく思ってしまう。
「わかったわ。よろしく言っておいてね」
なにかお土産でも持って行ってもらおうかな、なんて思いながら返事をすると、ノエルがぎゅっと手を握ってくる。
「一緒に来てくれないか?」
「へ?!」
私が行ったらそれこそ、お邪魔するようなもんじゃないの?
どうしよう。
私もロアエク先生の教え子だから気を遣ってくれてるのかな?
「いいの? 先生とゆっくり話したいなら、私は行かない方がいいと思うけど」
「レティシアを婚約者として紹介したいから、来て欲しいんだ」
「こ、んやくしゃ……」
ノエルの言葉が急に、重くのしかかってくる。
彼に婚約者と呼ばれることにはもう慣れているんだけど、問題は、外ならぬロアエク先生にそう紹介してくれるってことだ。
先に説明しておこう。
ロアエク先生は、それはそれは聖母のように素晴らしい先生で、私も大好きな先生だ。たぶん、歴代のお世話になった先生方の中でもダントツだと思う。
だからなのかも、しれない。
愛情深く神聖なロアエク先生に、契約した婚約者として会うのが後ろめたい。
きっとノエルは契約のことを伏せるだろうけど、愛のない結婚をしたって、バレたらどうしよう、先生には知られたくないな。
「婚約者がなにか、問題でも?」
「ひいぃぃぃぃ。なんでもございません!」
私のためらいを感じ取ったのか、ノエルが微笑みに圧を込めてくる。
そんな脅しをしてこなくったって、ちゃんと行くわよ。私だってロアエク先生の元気な姿を見たいんだもの。
「それならよかった。空の日に行くことにしよう」
「わかったわ」
「一日泊めてもらうつもりだから、準備しておいてね」
「え、泊まるの?! 私も?!」
泊まりとなると、ノエルと一日中一緒にいる、ことになる。
なんだなんだ、どういうつもりなの?
そっと彼の顔を見てみると、口の端を微かに持ち上げて妖艶な表情をしている。
黒幕だ。
その顔、ゲームの中のノエルがしてるの見たことがある。いかにも黒幕って感じの顔だなって思いながら見た記憶あるもん。
「ちゃんと休んでいるのか見張るつもりだと聞いたけど?」
「確かにそう言ったけど……」
まさかノエルについて行って見張ることになるだなんて想像もしていなかったけど、【なつき度】を上げるチャンスだし、ついていこう。
「そうね、ノエルがちゃんと休んでいるか、しっかりがっつり見ておくわ」
「一体なにを考えているのかわからないけど、よろしく頼んだよ」
ノエルは呆れたような顔をしてくるけど、その声はどことなく嬉しそうだった。
私たちは妖精に頼んで、ロアエク先生とトレントに遊びに行くことを伝えてもらうことにしたんだけど。
『おーけー。マフィンでいいよ~』
「僕が買いに行こう」
商売人の彼らはタダでは動いてくれなくて、依頼料としてマフィンを要求されたもんだから、ノエルが購買部まで買いに行くことになった。