《夢見の女王》婚約破棄の無限ループはもう終わり! ~腐れ縁の王太子は平民女に下げ渡してあげます
再びのループ~真実の愛を破壊する
許可のない葬儀と霊園
最初のループでマーゴットが戻る時期は、いつも学園の最高学年の始め頃だった。
親友の、同盟国アケロニア王国のグレイシア王女が学園に短期留学してきた後のことが多かった。
ところが、今回ループして戻ってきた時期は、両親が亡くなった直後。
まだマーゴットたちが学園の高等学校に入学する前の時期だった。
「あ。いつもと違うわ。良かった、繰り返しから抜けられたのね」
鏡を見ると、ネオングリーンだったはずの両眼のうち、片目の右目の色からネオンカラーの輝きが抜けて淡い緑色になっている。
ループ前にバルカスに抉られたほうの目だ。
「始祖から受け継いだ瞳は“時戻り”の魔法が使える。……これは秘匿しないといけないわよね」
さてどうするか。
前回までと同じことを繰り返しては、また卒業式で暴力を振るわれて自分が終わりだ。
ループ前の最後に聞いた守護者カーナの声を思い出す。
『マーゴット。君はとても思いやり深い女性だ。だが、バルカスに対してはもっと毅然と立ち向かうべきだった』
『情に振り回されないよう、冷徹さの祝福を与えよう。次の人生では冷静に立ち回ることができるように』
「もう王家やバルカスたちに下手に出るのはやめるわ。最終的にバルカスが手に入れば良しとしましょう」
それはこれまでのループ人生とは決定的な違いをもたらす決断だった。
マーゴットは従兄弟で幼馴染みのバルカス王子に弱かった。
同い年だがずっと姉のような気持ちで付き合ってきたから。
それから間も無くして、亡くなった両親の葬儀費用と、その後の霊園墓地の造園費用の請求がオズ公爵家に来た。
(なるほど、前回と同じような出来事が起こるのね)
最初のループでは、マーゴットは両親を亡くした悲しみで頭の働きがぼんやり鈍く、言われるままに支払いをしてしまっていた。
葬儀も済んでいたし、霊園も造園が完了した後で業者がやって来ていたからだ。
だが試しに、前回までとは違う対応をしてみることにした。
「葬儀費用はともかく、霊園など我がオズ公爵家は発注していません」
すると業者の担当者は自信たっぷりに言うのだ。
「王妃様のご命令です」
と。
「まあ。王妃様の命令ならば王家に請求するのが筋ではなくて?」
そう言うと業者は青褪めて、しどろもどろになった。
「で、ですが、工事自体はオズ公爵家のものなので、その、」
(自分でもおかしいことに気づいたようね。公爵家は発注を出していない。出したのは王妃様。公爵家の許可を得ていないのに工事を勝手に完了させてしまった。……こういうこと、王妃様はよくやるのよね)
そう。メイ王妃は思いつきで口だけ出して金を出さないことが多々ある。
この頃には他にも被害者がいたはずだ。
業者もその噂を知っていて、踏み倒されないか心配しているのだ。
だが、マーゴットとて建設業者を追い詰めたいわけではない。
「代金は支払いましょう。ですが、葬儀も造園も、オズ公爵家ではなく王妃様が命じられたものである旨、きちんと書面に残していただきます」
「そ、そんなことはできません、王家への不敬になります、困ります!」
業者たちはゴネたが、ならば代金を支払わないとマーゴットが突っぱねると冷や汗をかきはじめた。
そう、今回の件はどの業者に対してもオズ公爵家側からの正式発注ではない。
ということは、オズ公爵家と業者の間で正式に交わした契約書がないのだ。
逆に業者側が公爵家に詐欺を仕掛けたと言われても反論ができない状況だ。
これでは裁判になっても業者に勝ち目はない。
葬儀も造園もやり損になる。
渋々業者たちはマーゴットが支持した通りの念書を書いて提出してきた。
マーゴットは受け取った書類を、屋敷の安全な場所に厳重に保管した。
いずれ時が来れば、王家の横暴として告発することもあるだろう。
親友の、同盟国アケロニア王国のグレイシア王女が学園に短期留学してきた後のことが多かった。
ところが、今回ループして戻ってきた時期は、両親が亡くなった直後。
まだマーゴットたちが学園の高等学校に入学する前の時期だった。
「あ。いつもと違うわ。良かった、繰り返しから抜けられたのね」
鏡を見ると、ネオングリーンだったはずの両眼のうち、片目の右目の色からネオンカラーの輝きが抜けて淡い緑色になっている。
ループ前にバルカスに抉られたほうの目だ。
「始祖から受け継いだ瞳は“時戻り”の魔法が使える。……これは秘匿しないといけないわよね」
さてどうするか。
前回までと同じことを繰り返しては、また卒業式で暴力を振るわれて自分が終わりだ。
ループ前の最後に聞いた守護者カーナの声を思い出す。
『マーゴット。君はとても思いやり深い女性だ。だが、バルカスに対してはもっと毅然と立ち向かうべきだった』
『情に振り回されないよう、冷徹さの祝福を与えよう。次の人生では冷静に立ち回ることができるように』
「もう王家やバルカスたちに下手に出るのはやめるわ。最終的にバルカスが手に入れば良しとしましょう」
それはこれまでのループ人生とは決定的な違いをもたらす決断だった。
マーゴットは従兄弟で幼馴染みのバルカス王子に弱かった。
同い年だがずっと姉のような気持ちで付き合ってきたから。
それから間も無くして、亡くなった両親の葬儀費用と、その後の霊園墓地の造園費用の請求がオズ公爵家に来た。
(なるほど、前回と同じような出来事が起こるのね)
最初のループでは、マーゴットは両親を亡くした悲しみで頭の働きがぼんやり鈍く、言われるままに支払いをしてしまっていた。
葬儀も済んでいたし、霊園も造園が完了した後で業者がやって来ていたからだ。
だが試しに、前回までとは違う対応をしてみることにした。
「葬儀費用はともかく、霊園など我がオズ公爵家は発注していません」
すると業者の担当者は自信たっぷりに言うのだ。
「王妃様のご命令です」
と。
「まあ。王妃様の命令ならば王家に請求するのが筋ではなくて?」
そう言うと業者は青褪めて、しどろもどろになった。
「で、ですが、工事自体はオズ公爵家のものなので、その、」
(自分でもおかしいことに気づいたようね。公爵家は発注を出していない。出したのは王妃様。公爵家の許可を得ていないのに工事を勝手に完了させてしまった。……こういうこと、王妃様はよくやるのよね)
そう。メイ王妃は思いつきで口だけ出して金を出さないことが多々ある。
この頃には他にも被害者がいたはずだ。
業者もその噂を知っていて、踏み倒されないか心配しているのだ。
だが、マーゴットとて建設業者を追い詰めたいわけではない。
「代金は支払いましょう。ですが、葬儀も造園も、オズ公爵家ではなく王妃様が命じられたものである旨、きちんと書面に残していただきます」
「そ、そんなことはできません、王家への不敬になります、困ります!」
業者たちはゴネたが、ならば代金を支払わないとマーゴットが突っぱねると冷や汗をかきはじめた。
そう、今回の件はどの業者に対してもオズ公爵家側からの正式発注ではない。
ということは、オズ公爵家と業者の間で正式に交わした契約書がないのだ。
逆に業者側が公爵家に詐欺を仕掛けたと言われても反論ができない状況だ。
これでは裁判になっても業者に勝ち目はない。
葬儀も造園もやり損になる。
渋々業者たちはマーゴットが支持した通りの念書を書いて提出してきた。
マーゴットは受け取った書類を、屋敷の安全な場所に厳重に保管した。
いずれ時が来れば、王家の横暴として告発することもあるだろう。