《夢見の女王》婚約破棄の無限ループはもう終わり! ~腐れ縁の王太子は平民女に下げ渡してあげます
王家の支援金への横領対策
マーゴットが学園の最終学年に進学する頃にはすでに、王家からオズ公爵家への支援金や、王太女への支度金がバルカス王子の横領、着服被害に遭っている。
「確か、お父様たちが亡くなって少し経ったころからだったわね……」
王家からの金貨を横取りされるようになって、もう数年が経過している。
いったい、そんな大金を何に使っているのかと思えば、主に娼館通いらしい。
仮にも王族のバルカス王子が通うぐらいだから高級娼館だ。
「場末の下級娼館を使って、変な病気を貰って来ないだけマシかしら」
マーゴットだってわかっている。そんな呑気な問題ではない。
そこで娼婦を買うだけでなく、派手に飲食したり、店の者たちに金貨をばら撒いて“お大尽”振っているそうな。
学園にも娼館から直接通う日があるほどで、マーゴットも注意しに行ったら二日酔いで機嫌の悪いバルカス王子を何度も見た。
まだ学生の身で娼館に通い、飲酒する男。
それがマーゴットの婚約者で未来の王配なわけだが。
「………………」
本当に、あんな不良債権、捨ててしまえばいいのだ。
「……見捨てるだけならいつでもできる」
ただ、その寸前でいつも、どうしても最後の最後で踏ん切りがつかなかった。
それで何十回も似たような残酷な最期を迎えてループしているのだから、救えない。
これでは親友のグレイシア王女に「馬鹿女!」と罵倒されるわけだ。つらい。
ともあれ、バルカス王子が着服する王家からの支援金等については、過去のループの記憶を頼りに対策を講じた。
これまでは、バルカスは金貨を『婚約者のマーゴットの家に持参する』振りをしていた。
毎月必ずマーゴットのもとに行く名目で、バルカスは王家から金貨を預かることができていたので。
そこでマーゴットは、今回の人生では、もうサインを変更するなど遠回りな対策は取らなかった。
彼が毎月オズ公爵家まで持ってくるのではなく、雑草会が運営する金融機関に振り込みしてくれるよう王宮の財務省を訪れて手続きを行なった。
同時に、バルカス王子がオズ公爵家の金庫を勝手に開けて中の金貨を持ち出せないように、公爵家の財産も最低限の生活費だけ残して、金融機関にすべて預けるよう手配した。
これでひとまず、オズ公爵家は困窮から抜け出すことができた。
こうなると、遊ぶ金を得られなくなったバルカス王子は早々にオズ公爵家を訪れることがなくなった。
マーゴットは散々罵倒されたが、よく自分の非を忘れてマーゴットを責められるものだ。
その上、何だかんだで母親の王妃に甘えて小遣いを引き出して、娼館通いも止めていないようだった。
「……バルカスは元々、邪なものに染まりやすい気質だったってことなんだろうね。哀れなことだ」
神殿まで報告に行くと、出迎えてくれたカーナが一通り話を聞き終わった後で、しみじみと言った。
「でも。だって、子供の頃はあんなに素直で正義感の強い子だったのに」
「そろそろ現実を見たほうがいいよ、マーゴット。オレたちが今見ているバルカスこそが現実じゃないか」
「………………」
「まだ駄目なんだね。本当に困った子だ」
自分の、バルカス王子に対する言動だけが上手くいかないことには気づいている。
頭で考える分には、バルカス王子にも、国王や王妃にも毅然とした態度で立ち向かうのがベストだとわかっていた。
けれど実際に彼らを前にすると、マーゴットはどうにも愚かな女に成り下がってしまう。
「確か、お父様たちが亡くなって少し経ったころからだったわね……」
王家からの金貨を横取りされるようになって、もう数年が経過している。
いったい、そんな大金を何に使っているのかと思えば、主に娼館通いらしい。
仮にも王族のバルカス王子が通うぐらいだから高級娼館だ。
「場末の下級娼館を使って、変な病気を貰って来ないだけマシかしら」
マーゴットだってわかっている。そんな呑気な問題ではない。
そこで娼婦を買うだけでなく、派手に飲食したり、店の者たちに金貨をばら撒いて“お大尽”振っているそうな。
学園にも娼館から直接通う日があるほどで、マーゴットも注意しに行ったら二日酔いで機嫌の悪いバルカス王子を何度も見た。
まだ学生の身で娼館に通い、飲酒する男。
それがマーゴットの婚約者で未来の王配なわけだが。
「………………」
本当に、あんな不良債権、捨ててしまえばいいのだ。
「……見捨てるだけならいつでもできる」
ただ、その寸前でいつも、どうしても最後の最後で踏ん切りがつかなかった。
それで何十回も似たような残酷な最期を迎えてループしているのだから、救えない。
これでは親友のグレイシア王女に「馬鹿女!」と罵倒されるわけだ。つらい。
ともあれ、バルカス王子が着服する王家からの支援金等については、過去のループの記憶を頼りに対策を講じた。
これまでは、バルカスは金貨を『婚約者のマーゴットの家に持参する』振りをしていた。
毎月必ずマーゴットのもとに行く名目で、バルカスは王家から金貨を預かることができていたので。
そこでマーゴットは、今回の人生では、もうサインを変更するなど遠回りな対策は取らなかった。
彼が毎月オズ公爵家まで持ってくるのではなく、雑草会が運営する金融機関に振り込みしてくれるよう王宮の財務省を訪れて手続きを行なった。
同時に、バルカス王子がオズ公爵家の金庫を勝手に開けて中の金貨を持ち出せないように、公爵家の財産も最低限の生活費だけ残して、金融機関にすべて預けるよう手配した。
これでひとまず、オズ公爵家は困窮から抜け出すことができた。
こうなると、遊ぶ金を得られなくなったバルカス王子は早々にオズ公爵家を訪れることがなくなった。
マーゴットは散々罵倒されたが、よく自分の非を忘れてマーゴットを責められるものだ。
その上、何だかんだで母親の王妃に甘えて小遣いを引き出して、娼館通いも止めていないようだった。
「……バルカスは元々、邪なものに染まりやすい気質だったってことなんだろうね。哀れなことだ」
神殿まで報告に行くと、出迎えてくれたカーナが一通り話を聞き終わった後で、しみじみと言った。
「でも。だって、子供の頃はあんなに素直で正義感の強い子だったのに」
「そろそろ現実を見たほうがいいよ、マーゴット。オレたちが今見ているバルカスこそが現実じゃないか」
「………………」
「まだ駄目なんだね。本当に困った子だ」
自分の、バルカス王子に対する言動だけが上手くいかないことには気づいている。
頭で考える分には、バルカス王子にも、国王や王妃にも毅然とした態度で立ち向かうのがベストだとわかっていた。
けれど実際に彼らを前にすると、マーゴットはどうにも愚かな女に成り下がってしまう。