《夢見の女王》婚約破棄の無限ループはもう終わり! ~腐れ縁の王太子は平民女に下げ渡してあげます
聖女に拒否された国
「魔だなんて。それは不味い。それが本当なら、王妃を速攻で追放しないと!」
「待って。待ってください、カーナ様。もう遅いんです。もう王妃を排除するだけでどうにかなる段階ではないと、ラズリス様が」
バスケットから新しいミネラルウォーターの瓶を開けてカーナに渡した。ちょっとだけレモンの風味が付いていて、気分がスッキリするやつだ。
瓶を渡されたカーナは大人しくまたベッドに座り直した。
ひと口レモン水を飲んで、
「続きは?」
「王妃の魔の影響は限定的なんだそうです。悪影響を及ぼすのは、本当に周りの数人だけ。カレイド王国にいたときの僕はその一人だったんでしょうね」
「………………」
「それと、なぜか伴侶のダイアン国王陛下には悪影響がないんだそうです。だから」
優美な顔を苦々しげに歪めて、カーナは嘆息した。
「解決策が見つかるまで、ダイアン国王が魔を抑えているのか」
「……恐らくは。僕はその後すぐに、ラズリス様のご命令でカレイド王国を出て、自分が受けた魔の影響を聖女か聖者を探して浄化してもらうよう言われました。そして」
「王妃の魔を、祓える術者を探せとでも言われたかい?」
「……はい」
なるほど、これでようやく納得した。
カーナもマーゴットの王配はシルヴィスだと思っていたのに、再会してみればバルカス王子が婚約者だなどと言っている。
未来の王配のはずのシルヴィスがカレイド王国を出奔して、他国で冒険者などをやっている。
しかも、そろそろサブギルドマスターに就任できるかのハイスピード出世ときた。
まだシルヴィスは今年26歳の若い青年だ。異例の大出世といえる。
「冒険者活動で資金を稼ぎながら、冒険者ギルドのネットワークを利用して、聖なる魔力持ちを探しているんです。でも彼らの情報は秘匿されているから、なかなかアクセスできなくて」
「生きる治外法権だからねえ。基本的に国や団体に属さないからね。聖なる魔力の術者たちは」
聖女や聖者に代表される聖なる魔力持ちは、円環大陸の国際法で、特定の国や団体の支配を受けないものとされている。
ただし、本人たちが自分の意思で帰属している場合はこの限りではない。
例外は、国民に必ず聖女や聖者が生まれて、国で囲い込んでいる例のカーナ王国ぐらいだ。
「今そうして普通にしていられるってことは、祓ってもらえたんだろう? 誰にやってもらったの?」
「聖女ロータス様です。カレイド王国を出て、悪影響を抜くため大陸を左回りに旅しようと思っていたら、ちょうどカレイド王国の手前に滞在していた彼女から声をかけられて」
聖女ロータスは若い女の姿をした盲目の聖女で、元は亡国の皇女だったと伝わるとても力の強い聖女だ。
若い姿を保ったまま800年以上生きていることで知られていて、自分の力を高め蓄えることを目的として、常に円環大陸を“右回り”に単独か、弟子たちを伴って旅している。
「ロータス様の聖なる魔力で浄化してもらった後、薬師の元で薬草を潰した泥水に浸かって……。死ぬほど不味い薬草ポーションを吐くまで飲まされて、断食までさせられてようやく回復しました」
その期間、実に一ヶ月。
「そりゃご愁傷様。でもスッキリしただろう?」
「ものすごく。まるで天にも昇れそうな爽快感でしたね。……でもそのままロータス様を連れてカレイド王国に戻ろうとしたら拒否されてしまって」
『魔は、問題が発生した場所の関係者が解決するのが鉄則よ。つまりこの場合はカレイド王族ね』
それはもうクールにドライに切り捨てられたそうだ。
そして聖女本人はカレイド王国に寄ることなく、次の国へ旅立っていった。
「待って。待ってください、カーナ様。もう遅いんです。もう王妃を排除するだけでどうにかなる段階ではないと、ラズリス様が」
バスケットから新しいミネラルウォーターの瓶を開けてカーナに渡した。ちょっとだけレモンの風味が付いていて、気分がスッキリするやつだ。
瓶を渡されたカーナは大人しくまたベッドに座り直した。
ひと口レモン水を飲んで、
「続きは?」
「王妃の魔の影響は限定的なんだそうです。悪影響を及ぼすのは、本当に周りの数人だけ。カレイド王国にいたときの僕はその一人だったんでしょうね」
「………………」
「それと、なぜか伴侶のダイアン国王陛下には悪影響がないんだそうです。だから」
優美な顔を苦々しげに歪めて、カーナは嘆息した。
「解決策が見つかるまで、ダイアン国王が魔を抑えているのか」
「……恐らくは。僕はその後すぐに、ラズリス様のご命令でカレイド王国を出て、自分が受けた魔の影響を聖女か聖者を探して浄化してもらうよう言われました。そして」
「王妃の魔を、祓える術者を探せとでも言われたかい?」
「……はい」
なるほど、これでようやく納得した。
カーナもマーゴットの王配はシルヴィスだと思っていたのに、再会してみればバルカス王子が婚約者だなどと言っている。
未来の王配のはずのシルヴィスがカレイド王国を出奔して、他国で冒険者などをやっている。
しかも、そろそろサブギルドマスターに就任できるかのハイスピード出世ときた。
まだシルヴィスは今年26歳の若い青年だ。異例の大出世といえる。
「冒険者活動で資金を稼ぎながら、冒険者ギルドのネットワークを利用して、聖なる魔力持ちを探しているんです。でも彼らの情報は秘匿されているから、なかなかアクセスできなくて」
「生きる治外法権だからねえ。基本的に国や団体に属さないからね。聖なる魔力の術者たちは」
聖女や聖者に代表される聖なる魔力持ちは、円環大陸の国際法で、特定の国や団体の支配を受けないものとされている。
ただし、本人たちが自分の意思で帰属している場合はこの限りではない。
例外は、国民に必ず聖女や聖者が生まれて、国で囲い込んでいる例のカーナ王国ぐらいだ。
「今そうして普通にしていられるってことは、祓ってもらえたんだろう? 誰にやってもらったの?」
「聖女ロータス様です。カレイド王国を出て、悪影響を抜くため大陸を左回りに旅しようと思っていたら、ちょうどカレイド王国の手前に滞在していた彼女から声をかけられて」
聖女ロータスは若い女の姿をした盲目の聖女で、元は亡国の皇女だったと伝わるとても力の強い聖女だ。
若い姿を保ったまま800年以上生きていることで知られていて、自分の力を高め蓄えることを目的として、常に円環大陸を“右回り”に単独か、弟子たちを伴って旅している。
「ロータス様の聖なる魔力で浄化してもらった後、薬師の元で薬草を潰した泥水に浸かって……。死ぬほど不味い薬草ポーションを吐くまで飲まされて、断食までさせられてようやく回復しました」
その期間、実に一ヶ月。
「そりゃご愁傷様。でもスッキリしただろう?」
「ものすごく。まるで天にも昇れそうな爽快感でしたね。……でもそのままロータス様を連れてカレイド王国に戻ろうとしたら拒否されてしまって」
『魔は、問題が発生した場所の関係者が解決するのが鉄則よ。つまりこの場合はカレイド王族ね』
それはもうクールにドライに切り捨てられたそうだ。
そして聖女本人はカレイド王国に寄ることなく、次の国へ旅立っていった。