能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
マリー、男装する
部屋に入ると、ビビアンはタンスの引き出しを開け、ごそごそと何かを
探し始めた。
「たしかここに残ってたはず。ああ、あった!」
と言うと、分厚いシャツとズボンを引っ張りだした。
「はい、これに着替えて!と、その前に、胸も押さえなくちゃ!」
と言うと、ビビアンは長いさらしを出し、マリーの胸を締め付けながら巻き始めた。
「え?なんで?」
と、驚くマリーをよそに、ビビアンは強い口調で、
「いいから!着替える!」
と言った。
結局ビビアンに押し切られ、マリーは訳も分からず言われるまま着替えた。
着替え終わると、ビビアンはマリーのおさげ髪をほどき、後ろで一つに束ねた。
「はい!完成!」
そう言って、ビビアンは、マリーの両肩に手を置き、鏡の前にマリーを立たせた。
鏡に映ったマリーは、少年にしか見えなかった。
「これ、弟の昔着てた服。取っといてほんとによかったわ。あ、これセーターと
カーディガンね。雪山は寒いから。」
「ビビアン、まさか、さっきの募集・・・」
「選り好み出来る立場じゃないでしょ。うちで一冬居座られても困るのよ。
とりあえず、店で座っててよ。試しに他の人の反応見てみようよ。考えるのはそれからでも
よくない?」
「・・・分かった。」
マリーはビビアンに押し切られ、渋々店内の椅子に座っていた。
案の定、ぱっと見では、少年にしか見えないようで、来る客に、
「どうした?坊主、一人で仕事探しか?」
「よ、少年、年はいくつだ?」
などと、声を掛けられた。
その様子にビビアンも大成功と言わんばかりに、マリーに向かってウインクをした。
「カランカラン!」
扉の上の鐘が鳴り、背の高い端正な顔立ちの男が店に入ってきた。
冒険者にしては、いい服を着ており、明らかに貴族クラスの冒険者だということが
人目で分かった。