能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
「はい、じゃあ、すぐに手続き致しましょう!」

と言って、二人の前でビビアンはパンと手を叩き、レオナルドをカウンターの方に促した。

「レオナルド様、ご出立はいつになさいますか?」

「出来ればすぐにでもと言いたいところだが、彼も準備やご家族に報告も
あるだろうから、明日で構わない。」

「分かりました。マリ・・ウス、あとであなたも手続きするから、
さきに旅の準備、しっかりしておいてね!」

「え?は、はい。」

と返事をすると、マリーは2階の最初に自分が降り立った部屋へ向かった。

リュックの中を確認する。食器はこんなにいらないわね。
リュックの中に、二つだけ食器を残した。

鍋のサイズももう1サイズ落としたいが、今まで二人だけのパーティーに参加したことがなく、
4~5人用の鍋しか持っていない。マリーは最後にビクトリアがくれた小銭が入った袋を覗きながら、

わざわざ買うのも・・・盾代わりにもなるしこれでいいか。
あっ、あとで下に、セーターとカーディガンも取りに行かなくちゃ。

と、考えていたところに、

コンコンコン

と扉をノックされたと同時にビビアンがセーターとカーディガンを持って部屋に入ってきた。

「さっきの人、手続き終わったわよ。明日の朝、ここに来るって。」

と言いながら、持ってきた服をマリーに差し出した。

「・・・ありがとう。」

マリーは服を受け取ると、リュックに詰め始めた。

「なに?暗いわね。もしかして嫌なの?50万イエンよ!」

「そうなんだけど、ここは信用でやってるんじゃなかったの?」

と、半ばあきれたようにマリーがビビアンに言った。

「そうよ。信用第一!だから、絶対に女だってばれないようにね!」

と、ビビアンは自信満々で答える。

「はあ・・・。無茶苦茶だわ。」

「魔女ってことも隠し通せてるんだから、大丈夫よ、きっと。」

「性別はさすがに・・・。」

「大丈夫よ。すっかりマリーが男だって思ってたわ。もう、手続きしちゃったし、後戻り出来ないわよ。
あ、それとあの人、やっぱりどこぞのお貴族様みたいよ。貴族を騙すと極刑だからくれぐれも
気を付けて。ま、もしバレてもマリーの力で記憶消しちゃえばいいのよ。」

と、言ってビビアンはふふっと笑った。

「そんな魔法知らないわよ。」

と、マリーが言うと、マリーの言葉をかき消すように、

「さ、下に降りてきて!手続きするわよ、マリウスさん!」

と、言ってビビアンはまたふふっと笑った。
< 13 / 107 >

この作品をシェア

pagetop