能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
そう、この髪型では色目なんて使うことは不可能だ。
マリーの髪型は、銀髪のおさげ髪で前髪はきれいに切りそろえられているが、その前髪は
鼻の上まであり、見事にマリーの目を覆い隠していたのだ。

マリーは決して他人に目を見せなかった。

マリーには大きな秘密がある。それは魔女だということ。
本来、魔女は黒髪で紫色の瞳が多いのだが、マリーは魔女には珍しく、銀髪の髪色をしていた。
だから、誰もマリー自身が魔法を使わない限り、魔女だとは気づくはずもない。

なぜマリーが自分が魔女だということを隠しているのかというと、
ほとんどの魔女が王族を守るための要員に使われるからである。
魔力の高い魔女は他国から国を守る戦闘員として。そして美しい魔女は国王の護衛を兼ねて側妃
として。そうして若く美しい時期を国に搾取された魔女が年を取ると、今度は城の奥深くでポーションの
開発に一生を終える。魔女に生まれるとなんとも悲しい現実が待っているのだ。
一般の人が魔女と人間を識別するには、髪の色、そして瞳の色を見れば一目瞭然だ。
黒髪に紫色の瞳を持って生まれたら魔女と認定され、魔力量ごとに識別され、城で一生を管理されるのだ。
そもそも魔女は突然変異で生まれる。魔女の子供だからという理由で魔女が生まれるわけでもない。
その点マリーはラッキーだった。魔女の象徴である黒髪ではないからだ。そして生まれた時もピンク色の瞳だった。
だから、家族もマリー自身も自分が魔女だとは夢にも思わなかった。しかし、成長とともにマリーのピンク色の
瞳は薄紫になっていった。このままいくと魔女の象徴である紫色の瞳になるかもしれない。そんな恐怖から、マリーは
いつしか自分の瞳を前髪で覆い隠し、決して他人には見せないようになった。

しかし、そんな容姿ではどこも雇ってくれない。唯一働ける場所が、冒険者たちのパーティーのお世話係だった。
彼らは身の回りを世話をしてくるなら誰でもよく、容姿は全く気にしないし、おまけに討伐に成功すれば破格の報酬が
もらえるのだ。

逆に美女に来られるとパーティー内で争いが起こりかねない。そんなわけで、マリーには需要があった。

なのになぜこんなことに・・・。
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