能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
山麓の冒険者協会の食堂


マリーは椅子に座り、ホットミルクを飲んでいた。

うう、やっぱり子供扱いされてる・・・。
レオは私が19歳だとういうこと忘れているのか聞いていなかったのか・・・。
でも19歳の青年にしては背も低いし骨格も細い。少年にしか見えないからついつい忘れて
しまうのだろう・・・。

店に着くなり、レオはマリーの為にホットミルクを頼んでくれた。

その間に、レオは受付カウンターで手続きをしていた。
ちらりとレオの方に目をやると、受付で手紙の束を受け取っていた。
ざっと見ても30通は越えているだろう。
ほとんどの冒険者が、家族や恋人と手紙のやり取りをするのが通例だ。
しかし、ほとんどの場合、家族宛と恋人宛で1通や2通なのだが・・・・。レオの手紙の束は明らかに尋常ではない。
マリーの頭に女性の影がちらついた。
あんなに整った顔立ちをしていて、尚且つ冒険者ともなればモテないわけがない。
あの手紙の束はおそらく多くの女性からのレオに宛てたラブレターに違いない。
反対にレオが差し出した手紙は2通だけだった。
おそらく恋人と家族宛てだろう。大事な恋人がいるんだろうな・・・。
あの容姿で優しさも持ち合わせているなんて、モテないわけがないか・・・。
レオの恋人はいいなあ。あんな男性に愛される女性とはどんな人だろう。
きっと、美しくて聡明で優しい・・・
と、考えたところで、マリーはぶんぶんと大きく首を横に振った。
何を考えているんだ、私は!私は今は男だ!
と思い直したが、なぜか胸がチクッとなった。


マリーが俯き、一口ホットミルクを飲んだ時、

「はあ?本気かい?兄ちゃん!」

大柄のお店の主人の大きな声が店内に響き渡った。

「もちろん。」

と、レオナルドは全く動じることなく返事をする。

「やめときな。いくら腕に自信があったとしても、兄ちゃんとそんな子供じゃ
とてもじゃないが、この山は越えられないよ。」

「時間の都合でどうしても通りたいんだ。」

「今年、山越えに成功したのは1組もいない。過去に成功したのも大人数のパーティーで、
何人も死傷者が出たんだ。2人ぼっちじゃ必ず山賊にも狙われるし、魔物にも対応出来ないぞ!」

冒険者の無茶な挑戦を止めるのも冒険者協会の仕事である。無謀な輩を止めないと、
結局、捜索隊が派遣されることとなり、冒険者協会の負担になるからだ。

2人はそのあとも数分話し込んでいたが、2週間以内に次のポイントに着かなければ
捜索隊を派遣するということで、折り合いが付いた様だった。

「マリウス、さらに詳しい地図を手に入れたぞ。」

と言いながらレオナルドが向かいの椅子に座り、マリーにこの店で買った地図を渡した。

マリーが地図を広げると、今持っている地図よりさらに細かい内容が記されていた。
枝分かれした小径やきのこや木の実、薬草になる植物まで記載されていた。
そして何より、1つしかないと思っていた自然温泉が、大きいものから小さいものまで
たくさん記載されていた。

マリーは目を輝かせた。と言っても、この前髪の為だれにもそんなことは分からない。

マリーはホットミルクを一気に飲み干すと、地図を隅から隅まで熱心に見始めた。

そんな姿にレオナルドはふっと笑ったかと思うと、すぐに険しい表情で、レオナルドも
この店で買った新たな地図を広げた。

レオナルドが開いた地図には、過去に山賊が出た地点、魔物の出没場所などが事細かに記されていた。
そして魔物と山賊が出た地点が意外と多く、この山を越えるのに、山賊も避けては通れない
ことを覚悟した。

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