能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!

マリー、狙われる

宿の部屋

レオナルドは、マリーの顔を覗き込むように少しかがむと、

「で、さっきは何を言いかけてたんだ?」

と、優しい声でレオナルドがマリーに問いかけた。

マリーは、嘘をつくことに抵抗を感じていたせいか、

「実は、ぼ、ぼく、身体に大きな傷があって。」

と、少し声を震わせながら言った。マリーが考え抜いた渾身の嘘だ。

「分かった。ここの風呂は俺一人で行くよ。道中には自然温泉も
たくさんあるようだから、風呂はそこで入ればいいい。」

頭の回転の速い人だ。最後まで言わなくとも一言で私の言いたいことを分かってくれた。

マリーはこんな心優しい人を騙していることに心苦しくなった。

「ありがとうございます。」

と、マリーは罪悪感からかひとこと礼を言うのが精一杯だった。


「じゃ、俺は風呂に行ってくるよ。鍵はしっかり閉めておくように。」

「はい、いってらっしゃい。」


マリーはレオナルドが出て行くとすぐに寝間着に着替えた。
男の人はお風呂の時間が短いらしいので、急いだ方がいいと思ったからだ。

着替えを終え、ほっと一息つくと、

コンコンコン

と、ドアをノックされた。

マリーはドアを開けながら、

「レオ、忘れ物ですか?・・・。」

と、言って顔上げると、そこにはさっきの酔っ払いが立っていた。

「やっぱり、兄ちゃんの部屋だったか。俺もここのフロアでね、っヒック。」

マリーは一瞬で血の気が引いた。

そういえば、この男、食堂でボトルごとワインを持っていた。このフロアに泊まっていても
不思議ではない。

その男はそのまま部屋に押し入り、マリーの両手を押さえつけた。

「や、やめてくださいっ!!」

「ん?なんだ?女みたいな声を出して。ヒック。」

と言って、そのままベッドにマリーを押し倒した。
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