能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
「兄ちゃん、一晩だけ相手してくれるだけでいいんだよ。ヒック。
金がいるんだろ?」
と言うと、ポケットから金貨を1枚出して枕の上に放り投げた。
「はい、これあげるから、ちょっとの間いい子にしててね~。ヒック」
いつもならこんな男、魔法ですぐに何とか出来るのに、腕を抑えられたことにより、魔法が使えなかった。
右手さえ動かせれば・・・
マリーは足をばたつかせ必死に抵抗し、叫ぶ。
「誰か!助けて!」
「無駄無駄。みんな食堂で飲んでるし、下は大部屋でうるさいから、
兄ちゃんの声なんて聞こえないよ。ヒック。はい、いい子にしててね~。」
「くっ!」
マリーは歯を食いしばり、必死に抵抗する。
激しく抵抗したことにより、マリーの前髪から、美しい瞳がちらりと見えた。
「ん?兄ちゃん、ものすごいきれいな顔をしてるじゃないか!こりゃツイてるな!」
と、言ってゴクリと唾を呑むと、男はさらに上機嫌になった。
「やめて!!」
マリーは必死に抵抗するが、その時、
いや、待てよ、女と分かれば私には用はないかも・・・。
いや、だめだ。女だと大騒ぎされても困る。
と、考えがよぎった。マリーは抵抗しながらも、もうどっちにしろダメだと思った。
男はマリーの両腕を片手で抑えると、片方の手でマリーのズボンの中に手を入れて来た。
うっ。気持ち悪い。
マリーの目からぽろぽろと涙があふれ出て来た。
男は唇を尖らせ、汚い顔をマリーの顔に近づけてきた。
マリーは必死に顔を背ける。
もうだめだ・・・
マリーが諦めかけた次の瞬間、突然男が後ろに吹っ飛んだ。
ドン!
と大きな音とともに、男は壁に後頭部と背中をぶつけられ、ずるずると座り込むように伸びていた。
レオナルドが男の首根っこを掴み、後ろにぶん投げたのだった。
「マリウスっ、ケガは??」
と、レオナルドが駆け寄り、心配そうに言う。
「ケガはないです。・・・すいません、鍵をするよう言われたのに、ドアを開けてしまいました。」
「マリウスは悪くない。」
レオナルドはそう言うと、そっと優しくマリーを抱き寄せた。
マリーはレオナルドの胸で、わーっと堰を切ったように泣き出した。