能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
「マリー、すまなかった。気を悪くしないでくれ。ビクトリアには僕の方から言っておくから。」
勇者ミハエルが申し訳なさそうにマリーに詫びた。
「わかりました。では仕事に戻ります。」
と言ってから、マリーはぺこりと頭を下げると、薪を集めに茂みに入って行った。
「はあ~。なんでこんなに仲が悪いかな。」
と言って、マリーの後ろ姿を眺めながら勇者ミハエルは頭をポリポリと掻いた。
「それは、明らかにビクトリアさんのやきもちですよ。」
と、勇者ミハエルの背後から他のメンバーの一人のザックが言った。
「え?」
「知ってますよ。毎晩ビクトリアさんとよろしくやってるの。」
「・・・ははっ。」
そう言われ勇者は苦笑いをした。
「なのに、ミハエル様は常にマリーさんのこと気にしてますよね。」
「ああ。まあ、よく働いてくれているからね。」
「にしても、これ以上ビクトリアさんの機嫌が悪くなるとこっちも
困るんで。手出すなら一人にしといてくださいよ。」
と言って、自分のテントに入って行った。
「さて、どうしたもんかな。」
と、勇者は呟くと、勇者もまた自分のテントに入って行った。
パーティーでは、各々一人用のテントを使用し野営をする。
もちろん大きなテントを使うところもあるが、それは女性がいない場合だ。
女性を含むパーティーは、ほぼほぼ一人用のテントを使用する。
男女間のトラブルを防げるし、夜中に魔獣などに襲われたとしても、
分散していれば最小減の被害で済むのだ。
マリーが薪を持って戻って来た。
薪を並べ、慣れた手つきで火を起こすと、鉄で組んだ棒に水を入れた大きな鍋を引っ掛けて、
火の上に鍋を置いた。切ったキノコやベーコンなどを加え、自家製の香辛とハーブを
入れた。
煮立ってきたところでマリーは味見をする。
「よし。」
と言ってうなずくと、マリーは今度は大きな声で、
「みなさーん、食事の用意が出来ましたー!」
とテントが並んでいる方に向かって言った。
「はいはい。」
「今日もいい匂いだね。」
と言いながら、パーティーのメンバーが各々のテントから出て来た。