能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!

元冒険者パーティー

大きな洞窟の中

一方、同じ頃、マリーが不在の、勇者ミハエル、ザック、ビクトリアの3人になったパーティーは、目的の討伐対象の魔物に苦戦を強いられていた。

ブンッ!

ガリリッ!

巨大な三つ目の一角熊で、巨体から振り下ろされる大きな手の威力はすさまじく、一角熊の手が当たった洞窟の壁は、爪の形に削り取られ、パラパラと崩れて落ちていた。もしこの固い鋭い爪が直接当たれば即死することは目に見えていた。

3人は必死に闘うが、ビクトリアのシールドを物ともせず破り、ザックの火球も全く歯が立たなかった。
勇者ミハエルも近づくことさえ出来ず、3人は、一角熊の攻撃を避けるのが精一杯だった。

すでに3人は、疲れ果てており、着ている服も激しい戦いであちこち破れ、汗と土でドロドロになっていた。

勇者ミハエルは、剣を握り直しながら、

「一体どういうことだ?!…Bランクなら余裕の魔物のはずなのに…。」

と、息を切らしながら言った。その言葉に応えるように、

「一旦撤退しましょう!」

と、ザックが言った。

「私も一旦引いて体制を立て直した方がいいと思うわ!」

と、ビクトリアも言った。

3人はそう言ってから各々顔を見合わせると、同時に出口に向かって走り出した。

一角熊は、3人の後ろを追いかける。

攻撃が効かない以上、もう逃げるしかない。

3人は必死で走る。

出口が見えてきた。もう少し。あと少し。
3人は死に物狂いで走る。

ギリギリの所で3人は洞窟の外に出た。

一角熊は、自分のテリトリーから追い出せた事に満足し、ガオーっと叫んでから、大きな体を揺らしながらゆっくりと方向転換し、洞窟の奥へと帰って行った。


「助かった~。」

命からがら逃げ切った3人は、ゼイゼイと息を切らしながら、その場に崩れ落ちるように倒れ込んだ。
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