能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!

ビールと食事がどんどん運ばれてきた。
3人は、がっつくよう食べ始めた。

「はあ~、うまい!生き返る!」

と言いながら、ザックがビールをぐびぐび飲んだあと、骨付き肉にかぶりついた。
そして、もぐもぐと肉を食べたあと、

「今日の討伐、なんかおかしくなかったか?いや、今日だけじゃない。マリーがいなくなってから、
失敗続きだ。」

と言った。

「そんなの、たまたまでしょ。もともとあの女、討伐の時はいつも後ろに隠れてて、
食事以外なんの役にも立たなかったじゃない!」

と、ビクトリアが言った。

「いや、確かに、マリーがいなくなってから、ビクトリアのシールドもザックの火球も魔力が弱くなっていた。
俺の剣の威力もスピードも落ちてる。今までの俺たちなら簡単に倒せたはずなのに。」

「マリーが私たちに呪いをかけたってこと?!」

ビクトリアが、ビールが入った樽型ジョッキをドンとテーブルに置きながら言った。

「いや、逆だよ。マリーがパーティーに入ってから、調子が良すぎたんだ。」

と、勇者ミハエルが言った。

「確かに、マリーが入ってから魔物討伐がやけに順調だったからなぁ。CランクからBランクに上がったし、今日の討伐が成功していたらAランクも時間の問題だったよ。」

と、ザックが言った。

「じゃあなに?二人ともマリーのおかげだったって言うの?!」

と、ビクトリアがヒステリックに言う。

「今考えると、マリーの食事は不思議と疲れが取れてたように思わないか?」

と、勇者ミハエルが言った。

「いつも万全の体調で魔物に挑めた。もしかしたら、疲労回復や魔力増幅の食材を使っていたのかもしれないな。」

とザックが、言った。

「バカバカしい、そんな食材あるわけないわっ!」

と、ビクトリアは吐き捨てるように言うとグビグビとビールを飲み干した。

「確かに…そんな食材があれば既に重宝されていただろう。もしかしたら…。」

と、勇者ミハエルは言いかけたところで黙りこんだ。

もしマリーが魔女だとしたら、すべて納得出来る。しかしマリーは魔女特有の黒髪でも紫色の瞳でもない。瞳の色は忘れもしない美しい薄紫色だ…いや、薄い紫ということは色素が薄い魔女なのか…そんな魔女聞いたこともないが…もしマリーが隠れ魔女だとしたら!?確認しなければ!


と、勇者ミハエルが考え込んでいると、

「ミハエル様、もしかしたらなんだい?」

と、ザックが聞いてきた。

「いや、何でもない。とにかくパーティーにマリーを引き戻そう。」

と、勇者ミハエルは言った。

「賛成だ。」
と、ザックも言った。

「私はイヤよ!あんな女!」

と、ビクトリアはお酒のせいもあり、マリーの話をするだけで怒っているようだった。

すると、

「氷山にあるアイスドラゴンの花を煎じて飲めば、不老長寿、どんな病気や大怪我だって回復するらしいぞ!」

と、隣のテーブルでの屈強な男達の会話が聞こえてきた。3人の屈強な男達は、代わる代わる話す。

3人は、誰か言い出したわけでもなく、揃って静かに聞き耳を立てた。

「そういえば、昨日、冒険者協会で、氷山に行こうとしているパーティーを見かけたよ。」

「え?そんな無謀なパーティーいたかなぁ?大所帯だろうから気づきそうなものだが。」

「それが、違うんだよ!そのパーティー、二人だけなんだ!一人はシュッとした色男でもう一人は少年だったよ。」

「少年?!」

「どう考えたって無理だろう。ハハハ!」

「いや、それが宿でその少年が襲われかけたらしいんだが、シュッとした男が秒で締め上げたらしい。」

「その男、けっこう強いんだな。」

「強いなんてもんじゃなかったらしい。襲った男を部屋の壁に投げ飛ばしたらしいんだが、その壁、バキバキに破壊されてたらしい。店主から聞いたんだから間違いない!」

「へぇ~。そりゃ強いな。」

「でも、なんでその男、少年と組んでるんだ?」

「さあ?でも、よく覚えてるよ。銀髪で前髪がこの辺まであって…。」


と、言いかけたところで、勇者ミハエルが立ち上がり、その男達のテーブルの上にドンッと、飲みかけのビールの樽型のコップを置いた。

「その話、もっと詳しく聞かせてもらえるかい?」

と、勇者ミハエルは満面の笑みで、男達に話しかけた。



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