能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!

月の女神

ザバッ

次の瞬間、レオナルドの心臓がドクンと大きな衝撃を受けた。

その美しい女性が温泉から上半身を出したのだ。

濡れた銀髪は月明かりに照らされて艶やかに輝き、薄紫色の瞳もまた
月明かりを吸い込み星のごとく輝いていた。
湧き上がる湯気の中、温泉を楽しむその姿は幻想的でまるで月から舞い降りた女神のようだった。

華奢で白く美しい四肢に似合わず、胸はふくよかで美しい形をしており、
レオナルドは一瞬でその女神にくぎ付けになった。

見てはいけないと分かっていても目が離せなかった。その女神に見とれていたのだ。

パキッ

レオナルドは、女神を見ることに夢中になり枯れ枝を踏んでしまった。

しまった、乗り出し過ぎた!

レオナルドはすぐに隠れた。

マリーは音に反応し、ザブンと身体を温泉に沈めると、

「誰かいるの?」

と言った。

シーンと静まり返る森。ふくろうと虫の音だけが響いている。

レオナルドの鼓動が早くなる。

その時、偶然にもぴょこんと野兎が林の中から飛び出して来た。

「なんだ、うさぎか。早くお帰り。スープの材料にしちゃうわよ。」

と、マリーはかわいらしい声で言った。そしてマリーは、続けて、

「さ、私もレオが気づく前に帰らないと。」

と、言った。

レオナルドは耳を疑った。

あの女神はマリウスなのか?

半信半疑で、レオナルドはもう一度、温泉の方を見ると、
ちょうどその女性が温泉から上がったところだった。

その女性が、右手人差し指を立て、くるりと円を描くと、美しい薄紫色の瞳がオーロラ色に輝き、
女性の足元から風が舞い上がり、一瞬でその女性の髪と身体が乾いていた。

それから、おもむろにさらしを手に取ると、くるくると自分のふくよかな胸をつぶすように、
巻き始めた。

嘘だろ・・・。

レオナルドは口元を片手で覆った。
レオナルドにとって二重の衝撃だった。
一つ目はマリウスが実はとてつもなく美しい女性だったこと。
そして二つ目は魔女だったこと。

マリーは服を着終えると、髪を一つに結び、いつも通り前髪で
薄紫色の瞳を覆い隠した。
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