能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
皆は、焚火の鍋の周りを取り囲むように座った。

マリーの隣に勇者ミハエルが。その横にビクトリア。
そして、さきほど、勇者に物申したひげ面のザック。
男女2×2のパーティーだ。

ミハエルは剣術で戦う勇者。戦闘魔力は勇者の中では至って普通である。
ランクで言えばBランクだ。

ビクトリアは、防御の魔力を持ち、範囲は狭いがシールドを貼ることが出来る。
ビクトリアも同じくBランクである。

ザックは火の魔力を持ち、火球で戦う勇者だ。同じくザックもBランクだ。

この世界の男性は、二分の一の確率で戦闘魔力を持って生まれてくるものがいる。
男の場合はほとんどが戦闘に関する魔力だ。
女性に関しては、魔力保持者は少なく、ビクトリアのような防御魔力
を持つ女性はパーティーの中では貴重な存在で重宝されるのだ。
そういう環境もあり、ちやほやされてきたビクトリアはどうしても
我が強くなり、自分の思い通りにならないことがあるとすぐに機嫌が悪くなる。

「今日のスープ、いつもより味が濃いんじゃない?」

ビクトリアがマリーに向かって言うと、マリーはすぐさま

「申し訳ありま・・・。」

と言いかけたところで、その声にかぶせるようザックが、

「マリー、いつも通りとても美味しいよ。」

と言った。勇者ミハエルも

「うん、美味い!」

と、マリーに向かって笑顔で言った。
それを見たビクトリアは、プイっと、顔をそむけた。

いやいや、私なんかに気を遣うより、ビクトリアさんに気を遣ってほしい。
空気が重すぎる・・・。

それから皆、無言で食事をし終えると、各々のテントに戻って行った。

マリーは皆の食べた後の食器を集めると、そのまま空の鍋に放り込み、
鍋を籠のかわりのように、持ち手を持って川へ洗いに行った。

川で鍋と食器を洗い、再び戻ってくると、焚火が消えかけていた。

マリーは慌てて薪を足し、火が消えない様にした。

火が消えるとまた火を起こすのに時間がかかるのだ。
それに、火があることで野生動物が近づいてくることはないので、火の番も
マリーの大事な仕事である。

マリーが追加で枯れ枝を足していると、勇者ミハエルがマリーの傍にやってきた。
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