能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!

破壊

山に入ってから1週間ほどで山越え最後の予定の野営地に着いた。

「順調に進めてよかったですね。」

と、マリーが言うと、

「ああ。だいぶ氷山に近づいて来たな。」

と、レオナルドが言った。
まだ、ここには雪は降ってはいないが、すでにこの場所から、目的地のアイスドラゴンのいる氷山が見えた。

マリーは、自分のテントを組み立てながら、

「今日は体の温まるスープにしますね。」

と言った。

「へえ、そんなスープが作れるのか?」

と、レオナルドが言うと、

「ええ。さっき地図で見たんですけど、体が温まるスパイスの元になる実がこの近くで取れるみたいなんです。」

「そうか。」

「じゃあ、ちょっと行ってきます。」

と言って、テントを組み立て終えたマリーは森の方に駆けだした。


「え?おい!ちょっと待て。危ないから一緒に行く!」

と、レオナルドは自分のリュックだけを手に取り、慌ててマリーの後を追いかけた。


「大丈夫ですよ。地図ではこの辺にはもう魔物も魔獣もいないみたいですから!」

と、マリーは振り返りながら言うと、そのまま立ち止まることなく走って行った。

5分ほど進んだところに、スパイスになる実が群生していた。


「うわぁ!すごい!」

マリーは、初めて見る景色に感動した。

野原一面に赤い実がゆらゆらと揺れていた。

「日持ちするので多めに取っておこう。」

と、独り言を言いながら、マリーは楽しそうに赤い実を摘み始めた。

レオナルドはそんなマリーの様子を木にもたれ掛かりながら優しい眼差しで見つめていた。

マリーは袋いっぱいに赤い実を入れ終えると、群生の外にいるレオナルドの方を向き、
手を大きく振った。

「いっぱい取れましたよ~!!」

笑顔いっぱいのうれしそうなマリウスの様子に、レオナルドもうれしくなった。

あんなことがあって、もうマリウスの笑顔が見れないと思っていたが、よかった・・・。


二人で、元来た道を通って、野営地に戻ってくると、マリーが組み立てていたテントがぐちゃぐちゃに壊されていた。

「うそでしょ・・・。」

マリーは呆然と立ち尽くした。
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