能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
食器や、壊されたテントの片づけも終わり、いつの間にか日もとっぷりと暮れていた。
氷山が近いこともあり、いつ雪が降ってもおかしくない寒さだった。
レオナルドは自分の一人用テントを組み立て、先に入っていた。
そして、テントの中で、二人で使えるよう、自分の寝袋の紐を解いていた。
レオナルドにとってマリウスは、目が離せない少年で、旅を共にするうちに愛しい存在になっていた。そして、あの月の夜にマリウスの本当の姿を見て以来、少年だと思い込んでいた愛しい存在が実は美しい女性と分かり喜んでいる自分がいた。
しかし圧倒的な美しさと魔女であるという事実は、レオナルドの中でマリウスを女神のような存在にし、簡単に自分が触れていいのかという気持ちと、愛したい気持ちとで葛藤していた。
一緒に寝ることを提案したはいいが、俺は耐えられるんだろうか…。
そんなことを考えながら、寝袋の紐を解いていた。
一方、マリーは片づけはとっくに終わっていたが、レオナルドのテントに行く勇気が出ず、
焚火を長い木の枝でつついていた。
いつまでもこうしているわけにはいかない・・・。
マリーは焚火を消すと、立ち上がり、意を決してレオのテントに向かった。
きっと大丈夫。密着しなければバレない・・・。
「レオ、失礼します。」
「ああ。」
マリーはテントの入り口をゆっくりとめくり中に入った。
一人用のテントは想像以上に狭かった。レオの身体が大きいこともあり、より一層狭く感じた。
一人用の寝袋を見て、マリーの顔は赤くなる。マリーの寝袋はビリビリに破られて、使い物にならなかった為、
今晩はこの寝袋で二人で寝ることになる・・・。
寝袋の紐を外し終えたレオナルドは、先に寝袋に入ると、ぐいっと寝袋の端を引っ張り、
「マリウス、来い。」
と、言った。
「ええ?で、でも・・・。」
マリーは真っ赤になりながら動揺した。
寝袋の周りの紐は外してあってもやはり一人用だ。狭い空間で尚且つ同じ布団で男性と寝るのには抵抗がある。
マリーは自分は男…自分は男…自分は男…。
と、心の中で言い聞かせた。
真っ赤になり、ガチガチに緊張しながらも、マリーはレオナルドに背を向けて座ると、履いていたブーツの紐を
ほどき始めた。しかし長い間外にいたので、マリーの指はかじかんでおり、なかなか紐がほどけない。一人焦るマリー。
するとレオナルドが、マリーの背後に座り、マリーの両サイドを自分の両足で囲んだ。
そしてそのままレオナルドはマリーを後ろから抱きしめるように両腕を伸ばして来た。
「????」
マリーは突然のことに動揺し、自分に何が起こっているのか理解できなかった。
レオナルドは、ブーツの紐をほどこうと格闘しているマリーの両手に自分の大きな手をそっと重ねた。
そしてレオナルドの大きく温かな手が、優しくマリーの手を掴んだ。マリーのかじかんだ手に、レオナルドの
熱がじんじんと広がっていく。マリーの鼓動が早くなる。
「こんなに冷え切っていたらほどけないはずだ。」
レオナルドはそう言うと、マリーのブーツの紐をほどき始めた。
ああ、そういうことね・・・。
マリーはやっと自分の状況を理解し、自分の勘違いに恥ずかしくなった。
なかなかブーツの紐がほどけない私を見兼ねて、手伝ってくれただけなのに・・・。
マリーは耳まで赤くなった。
レオナルドの中で、マリウスは女神のような存在にも関わらず、あまりの距離の近さに、
触れてはいけないと思いつつも、触れたいという衝動が抑えられなかった。