能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
ああ、面倒くさい・・・。
勇者ミハエルに気づいたマリーは思った。
「マリー、さっきはすまなかった。まだ少し腫れているじゃないか。」
と、勇者ミハエルはそう言って、マリーの頬に触れようと手を伸ばした。
マリーは咄嗟にかわし、そのことに気づかれない様、食器を拭き始めた。
「ミハエル様が謝るようなことは何も。それにいつものことですから。これくらい平気です。」
と言った。
「平気なわけないだろう。ビクトリアには僕からも言っておくよ。」
やめてくれ。これ以上拗らせたくないのに・・・。
「本当に大丈夫ですから。ミハエル様は討伐にだけ集中してください。」
と言った。
2人が会話している様子を、テントの隙間から鋭い目が睨みつけていた。
ビクトリアの目だった。ビクトリアは拳をぎゅっと握りしめていた。
勇者ミハエルは自分のテントに戻ると、ごろんと転がり、後頭部を両手で支えながら、テントの三角にくぼんだ天井を見ながら
にやにやとした。
俺は知ってるんだ。前髪で常に目を隠しているが、マリーが実はものすごい美人だってことを!
前に一度、たまたま偶然ちらりと見たことがあったのだ。
妻にするなら、わがままで我が強いビクトリアより、大人しくて従順な美人のマリーの方がいいに決まっている!
ビクトリアがマリーをいじめてくれるのは都合がいい。弱ったマリーに優しくして、俺を頼ってくれたら。
まあ、もうすでに俺に惚れてるかもな。ひっひっひ。