能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
二人は冒険者協会に入り、扉を閉めた。

「ふう~。びっくりしましたね。」

と、マリーが言った。すると、

「いらっしゃい。待ってましたよ。」

と、言いながら冒険者協会の支配人が出て来た。
体が大きく、全体的にまあるいフォルムで、頭頂部が剥げており、口ひげは丁寧に整えられている。
支配人は優しそうな笑顔で、

「驚かれたでしょ。なんせ、あなた方が山に入ったという知らせを受けてから、日に日に
雲が晴れていったからね。みなさん、いつ出てくるか、どんな人達か一目見てみたかった
みたいですよ。」

と、言うと、二人に椅子に座るよう、促した。

レオナルドは荷物を降ろすと椅子に座った。マリーも支配人にぺこりと頭を軽く下げてから
椅子に座った。

「たった二人でこの山を越えるとは、ほんとにすごいですね。あなた方のおかげで、
暫くは最短コースのこの山を使えそうです。本当にありがとうございます。
この村の者、みなあなた方に感謝してますよ。」

「ああ。ところで、今日泊まりたいんだが、部屋は空いているか?」

と、レオナルドが聞いた。

「はい。ちゃんとご用意してますよ。本日はぜひ特別室をお使いください。」

と、支配人が答えた。

「いや、普通の部屋でいい。」

とレオナルドが言うと、

「いえ、ぜひ特別室をお使いください。感謝の気持ちです。」

と、支配人が言った。マリーは初めて聞く言葉に

「特別室・・・。」

と、思わずつぶやいた。レオナルドはその声にふっと口元が緩んだ。

支配人は、マリーのつぶやきに反応し、

「特別室というのは、本来、王族や貴族の方々の為に用意された部屋なんだ。
今の王様も昔、視察で王太子二人を連れてここにお泊りになられたことがあったんだよ。」

と、説明した。

「特別なお部屋なんですね。」

と、マリーが言うと、

「あなた方の活躍は本当に感謝してもしきれないほどです。今夜は、特別室で
ゆっくりお休みください。もちろん、お代は結構です!」

と、支配人は、にっこり笑顔で言った。

「感謝する。とりあえず、何か腹に入れたいんだが・・・。」

と、レオナルドが支配人に言うと、

「食堂はあちらです。」

と、言って二人を食堂に案内してくれた。
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