能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
冒険者協会の隣の装備店
店内には所せましと、老若男女の防寒用のコートに服、帽子、手袋、下着に至るまで置いてあり、
持ち運びに便利な乾物類、そして武器に至るまで、ありとあらゆる装備が置いてあった。
「わあ、いろいろありますね。」
マリーがレオナルドに言った。
すると、レオナルドではなく、こちらも小太りの店主が、
「ここは、氷山への装備が一通り揃ってるよ。氷山を舐めたら命取りだからね。
なんせ、ほとんどの冒険者が、氷山の恐ろしさを分かってないからね。氷山は一歩足を
踏み入れたら別世界だ。敵はアイスドラゴンだけじゃない。
恐ろしいほどの寒さと雪と氷の世界だよ。」
と、答えた。
「そうなんですね。」
と、マリーは頷きながら言った。
「ほんとに二人だけで行くのかい?」
店主が心配そうに聞いて来た。
「はい!」
マリーがしっかりと返事をした。
レオナルドは黙ったまま、吊るしてある白い毛皮のコートを見ていた。
店内にある商品の中で一番高額である。すると、店主はレオナルドに近づき、
「おお、さすが!お目が高い!」
と言った。そして続けて、
「これは、ビッグラビットの毛皮でして、お値段はしますが、防寒だけじゃなく、
そんじょそこらの刃物では、この毛皮はびくともしません!」
と言った。
「これを頂こう。」
と、レオナルドが言った。すると店主が、
「えっと、今はこのサイズしか置いておりませんで、おそらくお坊ちゃんにはぴったり
だと思うんですが、旦那のサイズが・・・。」
と、申し訳なさそうに言った。
「ああ、もちろん、彼の分だけでいい。俺は、あっちのコートを。」
と、普通のコートを指さした。マリーは慌てて、
「え?ちょっと待ってください。こんな高額なもの、払えません。」
と、レオナルドに言った。
「これは氷山に入るための必要経費だ。気にするな。」
と言った。
店主は、吊るしてあったビッグラビットの毛皮のコートを下すと、戸惑うマリーに着せた。
「うん。ぴったりだ。よくお似合いだし、これなら氷山に入っても大丈夫ですよ。」
と店主は言った。
白い毛皮がマリーの白い肌によく合い、まるで雪の精のようだった。
レオナルドは、ちらりとマリーを見てから、頷くと、
てきぱきと、マリーとレオナルド2人分の他に必要なものも購入していった。
二人は購入したものを特別室に運んだ。
「マリウス、これを使って。」
と言って、レオナルドは買ったばかりのリュックを差し出した。
「え?リュックも購入されてたんですか?」
「ああ、ないと困るだろ。これに必要なものを入れて。」
と、言った。
「ありがとうございます。」
マリーはレオナルドに礼を言ってから続けて、
「あの、お代は僕の報酬から差し引いてください。コートのお代はすぐには無理ですが、
いずれ必ずお返しします。」
と言った。この冒険が終わってもまたレオナルドに会える理由になる。
しかし、レオナルドは、
「必要経費だから、気にするな。」
と言った。
「いや、でもリュックや他の物に関しては僕の不注意だったので・・・。」
「いや、盗賊の件は俺の責任だ。マリウスが気にする必要はない。」
と言った。マリーはこれ以上言っても、きっとまた言いくるめられると思い、
「では、ありがたく使わせていただきます。」
と言って、手渡されたリュックに先ほどレオナルドが購入した物を入れ始めた。