能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
明日の出発の準備が終わると、二人は冒険者協会のフロントへ行った。

レオナルドはいつものように、手紙の束のやり取りしていた。

マリーは暇そうに椅子に座っていると、先程の隣の店の店主が、マリーに手招きした。

マリーはレオナルドの方を見ると、冒険者協会の人と話し込んでいるようだったので、
暇つぶしになるかも・・・と思い、手招きされるまま店主の方へ行った。

店主はマリーに、

「暇だったら、本でも読むかい?」

と言って、一冊の本を見せた。

10cmほどある分厚い本を渡された。

「?これはなんの本ですか?」

マリーは不思議そうに聞くと、

「簡単に言うと、氷山、いやここ一帯の歴史かな。」

と言った。

「歴史・・・。」

「ああ。どうも二人のことが心配でね。」

そう言いながら、店主はぺらりと本をめくった。

「アイスドラゴンの本当の恐ろしさを分かってないように思えてね。」

「正直、僕は何も分かってないです。」

と、マリーは素直に言った。

「君たちが手に入れようとしているのは、このアイスドラゴンが守っている、
氷花だろうけど、これは簡単に手に入れられるものじゃない。」

と言いながら、店主は挿絵の花を指さした。

「氷竜花を取りに行くやつは、よっぽど自分の腕に自信のあるやつか、よほどのバカだ。」

「そんなに無謀なことなんですか?」

「ああ。過去に成功したのはたった2回。50年以上も前だ。それなのに、たった二人で。
しかもこんな子供と挑むなんて、正気の沙汰とは思えない。」

レオナルドの事を悪く言われるのは嫌だ・・・。

「あの、こう見えて僕、19歳です。」

「ああ、失礼。大人だったか。ひょろっこいからてっきり子供だと・・・。」

「いえ、もう慣れっこです。お気になさらず。」

「まあ、話を戻すと、過去に2回成功したが、2回目とも冒険者の中に、
高等魔法の使い手が混じってたんだよ。」

「高等魔法?」

「ああ。要は、ものすごい力のある魔女が一緒だったんだ。氷竜花を手に入れただけじゃなく、
研究用にも持ち帰ったんだが、栽培するために同じ環境を作り出し育てたらしいが、
花は咲いても、花の力は失われていて、結局失敗に終わったらしい。氷竜花はアイスドラゴンのいる
ここで咲いた花しか、効用はないらしい。」

「なるほど。氷竜花はアイスドラゴンの魔力をもらっているのかもしれないですね。」

「少年、なかなか、賢いな。」

「そんなことは。じゃあ、国の魔法隊で挑めば簡単に手に入るのでは?」

「それが、今では、めっきり魔女の数も減り、魔法隊でも魔力の強いある魔女はいないらしい。
だが、氷竜花を手に入れれば億万長者だ。どんな病もたちどころに治るらしいからな。それで、冒険者たちは
一攫千金を夢見て挑戦者が後を絶たないんだ。」

そう、店主が言ったところで、レオナルドがやってきた。

「何を話しているんだい?」

と、レオナルドが聞くと、店主が、

「ちょうど、良かった。旦那たちに見せたいものがある。」

と言って、立ち上がると、店主は店の裏に二人を案内した。
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