能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
マリーは急に恐ろしくなった。

樹氷は一本や二本ではない。ざっと見えるだけでも、50人以上はいる。

「どうして・・・。」

マリーは手で口元を抑えぶるぶると肩を震わせた。

レオナルドはそっとマリーの肩に手を置き、優しく抱き寄せた。

「驚くのも無理はない。でもこれが現実だ。彼らは皆、アイスドラゴンに
凍らされたんだよ。これでもなんとかここまで運べたが、まだ、氷山に凍らされた
ままの冒険者たちもいる。」

「あの・・・この人たちはどうなるんですか?助かるんですか?」

「国の魔法隊に連絡はしているんだが、いちいち人の樹氷が出来る度に来てはくれなくてね。
なんとか年に一度来てもらい、樹氷を一瞬で解かす魔法をしてもらっているんだ。」

「他に氷を解かす方法はないんですか?魔法しか無理なんですか?」

「徐々に解かすと体が壊死するらしい。一瞬で氷を解かせば、また問題なく心臓が動き出すらしい。」

「なるほど。魔法しかないんですね。」

「分かったなら、氷山に行くのはやめておけ。これ以上樹氷を増やしたくない。」

「だったらなんでコートや装備を私たちに売ったんですか?」

「最近はほとんどの冒険者がアイスドラゴンの鳴き声を聞いただけで、途中で戻ってくるんだ。
でも、君たちはあの山を越えて来た。なんなくアイスドラゴンの巣まで行けるだろう。ただ、巣の
中で凍らされたら、助けようがない・・・。それに子どもの樹氷なんて見たくない。」

だから19歳なんだってば・・・。とマリーは思った。

すると、レオナルドが、

「どうしても氷竜花が必要なんです。」

と、言った。店主は、それを聞いて、深いため息をつくと、

「まあ、身なりと金の払いっぷりから金目当ての冒険者ではないことは薄々は分かっては
いたんだが。」

「ご心配いただいてありがとうございます。先ほど、協会の人とも話して、一週間以内に
戻って来なければ捜索隊の派遣を言われました。」

「決心は固いようだな。2人の無事を祈ってるよ。じゃあ、この話はここまでにしよう。
さあ、今晩は、旦那たちに魔物討伐の礼を兼ねて食堂のコックが腕をふるうから、ぜひ
来てくれ。ああ、少年、その本持っていきな。」

「はい。いろいろとありがとうございます。」

と言って、二人は特別室に戻った。
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