能ある魔女は目を隠す？！二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました！

食堂

食堂


どこに隠れていたんだと思うくらい、食堂には多くの人であふれていた。

レオナルドとマリーが食堂に入ると、

「待ってました！」

「君たちは英雄だ！」

「冒険者の鏡だ！」

「ありがとう！！」

と、拍手が巻き起こる中、皆、口々に二人に感謝の気持ちを伝えた。

店主が

「さあさあ、お二人さん、ここに座って！」

と、二人を食堂の真ん中のテーブルに案内した。

そして、店主は、レオナルドには大きな樽ジョッキに入ったビールを、

マリーにはジュースを手渡すと、

「二人の英雄にかんぱーい！！」

と、大声で叫んだ。

すると、食堂にいた全員も、手に持っていた樽ビールを掲げ、

「かんぱーい！！」

と、叫び、その声が合図となり、騒がしく宴会が始まった。

二人の前に、どんどんとご馳走が運ばれてきた。

「さあ、遠慮せず、いっぱい食べとくれ！」

と、コックが嬉しそうに二人に向かって言った。

「はい！いただきます！」

マリーは久々の肉料理に目を輝かせた。と言ってもマリーの瞳の輝きは周りの者には前髪で見えないが。

マリーはもりもりと夢中で目の前に置かれたご馳走を食べていた。ふとを顔を上げると、

レオナルドは、村人たちや他の冒険者たちにビールを勧められながら質問攻めに遭っていた。

いつもクールなレオナルドが、たじろんでいる様子が、マリーの目にはとてもおかしく映った。



一通り、質問攻めの波が去り、レオナルドはやっと、食事に手を付け始めた。

「おつかれさまです。」

マリーがにっこりしながらレオナルドに言った。

「ふう。さすがにここまでもてなされると疲れるな。」

「みなさん、よっぽどうれしかったんですね。」

「ああ。でも魔獣は消えてもまた魔素がたまれば復活してしまう。」

「それでも、こんなに喜んでもらえたら、嬉しいですよね。」

「そうだな・・・。」

と、マリーの方を見ながら答えたレオナルドだったが、なぜか遠い目をしていた。

食堂の中は、最初はレオナルドを中心に人だかりが出来、盛り上がっていたが、次第に

いくつかのグループに分かれ、各自で盛り上がり始めた。

マリーは、遠い目をしているレオナルドが気になり、

「明日からまた大変ですよ！さあ、食べられるうちに頂いちゃいましょう！」

と、元気よくレオナルドに言った。

「ああ、そうだな。」

レオナルドはそう言うと、再び食べ始めた。