能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
勇者ミハエルは、マリーの引きつった表情など全く気に留めることもなく、

「やあ、久しぶりだね。なかなか見つけられないはずだよ。男装しているんだもんな。」

と言った。

「な、何の用ですか?勇者さま。」

と、マリーは動揺しながらも何とか声を発した。

「何の用ってつれないなあ。君を見つけるのにどれだけ苦労したと思う?」

「私は、パーティーを追い出された身ですので・・・。」

「マリー、あれは間違いだ。戻って来てくれ。マリーが嫌ならビクトリアをクビにするよ。」

勇者ミハエルは、悪びれる様子もなく淡々と話す。

「わ、私はもう新しいパーティーに入っていますので、戻るつもりはありません。」

「本当に?男装までして偽って今のパーティーにこだわる必要なんてないだろ?」

「とにかく、私は今のパーティーでやっていくつもりですので、どうぞ、私の事は忘れてください。」

マリーがそう言うと、勇者ミハエルは、軽く伸びをしながら、

「さっきの男、マリーが本当は女だって知ったらびっくりするだろうなあ。裏切られたと思って、

激怒するかもしれないなあ。」

「何が言いたいんですか?」

マリーは眉をひそめながら聞いた。

「いや、本来僕は口は重い方なんだけど、うっかり話してしまうかも。」

マリーは、その言葉を聞き、どこが勇者だ!卑怯な男だ。と思いながらも、

「お好きにどうぞ。私は戻りません。」

と言いながら、席を立とうとした。

すると、勇者ミハエルはマリーの腕をぎゅっと掴むと、そのまま勢いよく下に引き、もう一度座らせた。

そしてそのままマリーの耳元で、

「魔女だってばらすぞ!」

とささやいた。

マリーは慌てて勇者ミハエルの顔を見ると、勇者ミハエルはニヤリと笑った。そして

「気づかないとでも思ってたのか?」

と言った。

マリーは顔面蒼白になった。

「心配するな。マリーを悪いようにはしない。俺のパーティーに戻ってくるか、
俺と結婚するか、どっちか選ばせてやる。よく考えて返事をくれ。」

そう言い残すと、勇者ミハエルは飲んで盛り上がっている集団の中に戻って行った。

マリーは何も返す言葉がなく、座ったまま、ただうなだれていた。


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