能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
別れ
じゃら
マリーは微かな音に気づき、目を覚ました。
マリーは、はっとした。
薪を足さなくては!!
しかし、暖炉の火は煌々と燃えており、部屋の中は暖かく、マリーの肩には布団が掛けられていた。
そしてマリーの目の前には、小袋が置いてあった。
先程の音は、レオナルドがマリウスの為に置いた、お金の入った小袋の音だった。
マリーがレオナルドの方を見ると、今にも出発しそうな、出で立ちだった。
「ごめんなさい!すぐに出発の支度をします!」
マリーは起き上がると、慌ててそう言いながら、準備にとりかかろうとした。
しかし、レオナルドは、
「マリウス、君はここに残っていてくれ。その金は今までの分の報酬だ。」
と、予想外の言葉が返ってきた。
「え?」
マリーの手が止まる。
「俺が1週間以内に戻って来なければ、麓の冒険者協会に連絡してくれ。」
「何を言っているんですか?僕も一緒に行きます!」
「すまない。今回ばかりは君を守る余裕がないんだ。」
「守ってほしいなんて思ってません!聞いてください!昨晩、本を読んだんですけど、
アイスドラゴンの事が詳しく書かれていて!」
と、そう言いながら、マリーはレオナルドに詰め寄った。
「だめだ!足手まといなんだ。」
と、レオナルドは目を逸らしながら言った。
「足手まといにはなりません!きっと役に立ってみせます!」
「君が思っている以上に、危険な場所なんだ!」
「じゃあ、どうして僕を雇ったんですか?!契約期間の間は一緒に行きます!!」
マリーは気持ちが抑えきれず、必死に訴え、どんどん声が大きくなる。
レオナルドは、とうとう、
「言うことが聞けないなら、たった今ここで解雇だ!」
と、言い放った。
「そんな・・・ひどい・・・。」
マリーの瞳から涙があふれ出した。
自分の不甲斐なさからなのか、ここでレオナルド別れてしまうことでなのか、
マリー自身も一体どこからくる涙なのか分からなくなっていた。
「僕は、そんなに頼りないですか?僕は足手まといなんですか?僕はただレオを守りたいだけのに・・・。」
小さい肩を震わせながら涙を流し、弱弱しく佇むマリウスの姿に、レオナルドは、思わずマリウスを引き寄せ、
力強く抱きしめた。
「???????」
レオナルドにいきなり抱きしめられたマリーは激しく混乱した。
「マリウス、俺も君を守りたいだけなんだ。お願いだから分かってくれ。」
と、レオナルドはマリーを抱きしめながら、懇願するように言った。
マリーはその言葉で、レオナルドの背中に腕を回すと、
「分かりました。ここで待ってます。」
と言いながら、顔を上げた。
マリーの前髪は、激しく言い争ったせいで、隙間が出来ており、マリーの涙でうるんだ美しい薄紫の瞳と、
レオナルドの目が合った。
その瞬間、
レオナルドの唇が、マリーの唇に優しく重なった。
「??????」
マリーは、一体何が起きたのか理解できなかった。
しかし、大好きなレオと、一瞬でもこうなれた喜びに、身を任せた。
一瞬の出来事だったが、マリーにはとてつもなく長く感じた。
レオナルドは、そっと唇を話すと、無言のままリュックを背負い、
山小屋を後にした。