能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
ザックが起きてみると、朝食の用意がなく、焚火の火も消えていた。

マリーの姿がない。テントもリュックもなく、ザックは明らかにおかしいと感じた。

川に行っている?にしてもマリーの気配がない・・・。

ザックは慌てながらすぐに勇者ミハエルのテントに向かって、

「ミハエル様っ!ミハエル様っ!」

「なんだよ、朝から大きな声で。」

テントから、勇者ミハエルが眼をこすりながら出て来た。

「マリーがいませんっ!!」

「なんだと?!」

勇者ミハエルは一気に目が覚めた。

辺りを見回してから、マリーがいないことを実感すると、すぐにビクトリアのテントに向かった。

「ビクトリア!開けるぞ!」

明らかに怒りのこもった声で、ビクトリアのテントの入り口の布をめくった。


「な~に?ミハエル様、朝から大きな声を出して。」

ビクトリアは少し乱れた髪をそのままに気怠い声で、勇者ミハエルに言った。

「マリーをどうした?」

ミハエルは怒りを含んだ声でビクトリアに聞いた。

「どうしたもこうしたも、邪魔だから、出て行ってもらっただけよ。」


と言い終えると、ビクトリアは両腕を天井に向かって伸ばし、大きなあくびをした。

勇者ミハエルの怒りが頂点に達した。俺の花嫁候補を勝手に・・・!

「ビクトリア、お前も出て行っ・・・」

と、言いかけたところで、ザックが勇者ミハエルを後ろから羽交い絞めにし、後ろへ引っ張った。

「ダメです!ミハエル様!我々は防御魔法がないと進めません!」

と、ザックが小声ながらも声を張って勇者ミハエルの耳元で言った。

「な~に?ミハエル様?」

と、ビクトリアが聞くと、ミハエルは大丈夫だというようにザックの腕をほどきながら、

「いや、何でもない。」

と言って、消えた焚火の方へ行くと、思い切り残灰を蹴り上げた。











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