能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
ここからは気を引き締めて行かないと・・・。

マリーはゴクリと唾を呑むと、慎重に音を立てない様、ゆっくりと静かに洞窟の中に入って行った。

洞窟の中は、床と壁一面、氷で覆われており、全体的に青白く、ほんのりと明るさを保っていた。

洞窟の中は、道こそ分かれてはいないものの、長い距離を奥に進めば進むほど、マリーの恐怖心が増した。

そして、至る所に、凍らされた人がそのまま放置されていた。

マリーはとても恐ろしかったが、ひとつひとつ、レオナルドではないか確認しながら進んだ。

レオナルドではないことを確認する度、ほっと胸をなでおろした。

この調子だと、私の精神が持つかどうか・・・。

と、心配になってきたとき、

洞窟の奥の方から、

ゴオーッ

という音が響き渡った。

この奥にアイスドラゴンがいる!そして、今レオが戦っているかもしれない!

マリーはそう思うと、無我夢中で駆け出した。

ゴオーッという音が、奥に近づくにつれ、どんどんと大きくなる。

洞窟の奥まで来ると、明らかにその先にとてつもなく広い空間が広がっているのが分かった。

きっとこの中にアイスドラゴンがいる!

マリーはそう確信し、洞窟の壁に張り付くと、そうっと中を覗き込んだ。

すると、中も、壁も床も天井もすべて分厚い氷で出来ており、一番奥に楕円形のアイスドラゴンの巣らしき
ものがあった。その楕円形に沿うようにホワイトブルーの氷竜花が所狭しと咲いていた。

見つけた!

マリーがそう思った瞬間、また再び、ゴオーッという音が、すさまじい音量で何回も洞窟内に響き渡った。

マリーが音のする方を覗くと、アイスドラゴンがレオナルドめがけて氷炎を吐いていた。

レオナルドは華麗に氷炎を避けている。

良かった、レオ。生きてる!

マリーは嬉しさがこみあげて来た。

ここまで来る途中、たくさん凍らされた人に遭遇した。

どれだけ心配したことか。

しかし、もう3日。レオナルドの体力も心配だ。

アイスドラゴンは睡眠時間が短く、しかも、殺してしまうと、氷竜花も枯れてしまうので、

下手に手出しが出来ない。

マリーの魔法は不発に終わるかもしれない。でも1%でも可能性があるのなら・・・。

マリーは、

レオが、アイスドラゴンの気を引いている今しかない!

と思った。

マリーは、壁に張り付き、呪文を早口で復習した。


魔女マリーの名において、
私はあなたを傷つけることはないでしょう
ドルミール ドルミール ドルミール


よし、いける!

マリーは、もう一度、慎重に中を覗き込んだ。

アイスドラゴンは、レオナルドに集中している。

マリーは意を決して中に入り、

指を上に向けると、急いで 呪文を唱えた。

魔女マリーの名において

私はあなたを傷つけることはないでしょう

ドルミール ドルミール ドルミール


と、マリーが呪文を言い終わると同時に、アイスドラゴンの氷炎が、

既ににマリーに向かって襲いかかってきていた。

これでいい、レオが氷竜花を手に入れられるなら、私は凍らされてもいい・・・。

マリーはぎゅっと瞳を閉じた。
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