能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
山小屋
外はすでに真っ暗で夜を迎えていた。
マリーがゆっくり目を開けると、そこは氷山への中継地点のあの山小屋の中だった。
マリーが咄嗟に選んだのは、近くて安全な山小屋だった。
窓から入る月明かりに照らされたレオナルドが横たわっている。
マリーは、レオナルドに声を掛ける。
「レオ!レオ!目を開けて!お願い!!」
マリーの悲痛な呼びかけに、レオナルドは半分だが、ゆっくりと眼を開けた。
「マ・・リ・・ウス・・・」
「ごめんなさいっ!私のせいでっ!」
今のマリーには男の話し方をする余裕がなく、レオナルドに語り掛けた。
「絶対助けるから、頑張って!!」
マリーはそう言うと、急いで店主にもらった本をペラペラとめくり出した。
必死に探すが、半分だけ身体が凍った人のことなど、一言も書かれていない。
どうしようどうしよう・・・。
レオナルドの表情からどんどん血の気が引いていくのが分かった。
時間がない。そうだ!もし冒険者協会に魔法隊が来てくれていたら・・・。
マリーは一抹の望みをかけ、再びレオナルドに覆いかぶさると、指を上に向け、くるくると回した。
マリーが眼を開けると、今度はレオナルドと共に吹雪の中にいた。
冒険者協会を目標にしたはずなのに・・・
魔力の使い過ぎと二人分の移動で、目標地点がずれてしまったのか・・・。
キョロキョロとあたりを見渡すと、ほのかに明かりが見えた。
冒険者協会だ!
二人に吹き付ける吹雪に苦戦しながらもマリーは力を振り絞り、
レオナルドをおぶるように両肩に掛けた。
猛吹雪の中、マリーはそのままレオナルドを引きずりながら、冒険者協会に向かって、一歩一歩、歩き出した。
ちょうどそのころ、店主が、一服しに、店の外に出ていた。
2~3回パイプをふかしたところで、あまりの寒さに店に戻ろうとした時、
吹雪の中に人影が見えた。
「ん??見間違えか?」
店主は目をこすり、目を細めながら、もう一度よおく目を凝らした。
「あいつらだ!!」
店主は店に戻ると、コートを羽織り、ランプを持つと、
「おい!誰か手伝ってくれ!」
と、声を掛けた。
先日の祝賀会とは打って変わり、ほとんど店には客はいなかったが、
2人ほど、すぐにコートを羽織り、出てきてくれた。
「あそこに人が!」
と、店主が指さした方に3人で駆け出した。