能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
兵士たちが帰ったあと、ビビアンは、マリーをベッドで休ませた。
「水晶玉が壊れてたみたいでよかったね。」
と、ビビアンが嬉しそうに言うと、扉の前で立っていたビビアンの父が、
「水晶玉は壊れてなんかないさ。」
と言った。ビビアンが、怪訝な顔で、
「どういうこと?」
と、聞くと、ビビアンの父は、
「たまたま魔力切れを起こしていただけだ。」
と言った。
「魔力切れ?」
マリーとビビアンは声を揃えて聞いた。
「ああ。急激に何回も魔法を使うと魔力切れを起こすんだよ。これは魔女に限ったことじゃない。
火魔法も水魔法も同じさ。ただ、めったに起こることはない。いくら魔法を使ったとしても、多少は
魔力が残るもんだからな。」
「たしかに。ここ最近、マリーは連続で魔法を使っていたし、今日に限っては、3回連続・・・。」
「ああ、失敗は許されないからな。全力で魔法を使ったんだろう。」
「そういうことだったのね。でも、本当によかった。」
「ただ、今回の事は噂になってすぐに広まるし、兵士にも目を付けられたかもしれない。
マリー、申し訳ないが、体調が戻り次第、出て行ってくれないか。」
と、ビビアンの父が言った。それを聞いたビビアンは、
「はあ?そんな勝手なこと言わないで!マリーには家がないのよ!」
と、ものすごい剣幕で父に詰め寄った。
たしかに今のマリーにとって、住むところがなくなるというのは、かなり厳しい。
冬場は冒険者の仕事もないし、冬に野宿など死を意味する。ビビアンの気持ちはとても
うれしいが、自分のせいで、ビビアン親子が言い争うのはいたたまれない。
「ビビアン、おじさん、大丈夫です。明日、出て行きます。今まで大変お世話になりました。」
と言った。ビビアンは、
「マリー!!何言ってるの?!父さんの言うことなんて気にしなくていいのよ!」
と、語気を強めて言った。
「ビビアン、本当に大丈夫だから。実はレオからしっかり報酬をもらってるのよ。
だから、心配しないで。」
と言った。
「分かった・・・。マリーがそこまで言うなら。新しい住所が決まったら、すぐに連絡してね。」
と、ビビアンは残念そうに言った。
報酬など嘘である。マリーは移動魔法の連続使用で荷物どころではなく、
しっかり山小屋にリュックを忘れてきていた。