能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
バシッ!!

マリーが勇者ミハエルの方を振り向いた瞬間、頬に強い衝撃が走った。

マリーは、勇者ミハエルに打たれた頬を押さえながら、勇者ミハエルを睨みつけた。

すると、勇者ミハエルはマリーを見下しながら、

「昨日はよくも恥をかかせてくれたな!」

と、怒りの籠った声で言った。

「私は何もしていないわっ!」

と、マリーは勇者ミハエルに言った。

「まあ、いい。さあ、パーティーに戻るか、お俺と結婚するか、今ここで返事をしろ。」

と、勇者ミハエルが言うと、マリーは、

「どっちもごめんだわ。」

と言った。

すると勇者ミハエルは、

「そう言うと思ってたけどね。じゃあ、僕の為に魔法隊に入ってもらうよ。」

と言うと、マリーの腹に重い拳を一発放った。

「うっ!」

マリーは鈍い痛みとともに、両膝をついた。

「マリー!!」

マリーの耳にザックの声が遠ざかる。

ザックがすぐさま崩れ落ちるマリーを支えた。

そのままマリーは気を失った。

勇者ミハエルは、ポケットから真っ黒い腕輪を出すと、マリーの腕にはめた。

「さ、これでもうマリーは魔法を使えない。魔力も消耗しない。直接城の魔法隊に売りに行くぞ!」

「この腕輪、いくらしたんですか?」

とザックが聞いた。勇者ミハエルは笑いながら、

「ビクトリアが、怒ってパーティーを出ていくくらいの金額さ。でも、マリーを

魔法隊に差し出せば、その十倍、いや、その何百倍もの金が手に入る!」

と言った。

ザックは、マリーをゆっくりと丁寧に肩に担いだ。

「マリーが心配だから、城までは御供します。でもそこで私はおります。」

と、ザックが言った。

「え?金はいいのか?」

と、勇者ミハエルがびっくりした様子で聞いた。

「お金はいらないです。ただ、もうこれ以上マリーを傷つけることだけはしないでください。」

と、ザックは言った。

「もちろん!わかってるよ。金が要らないんなら、俺も助かるよ。」

と、勇者ミハエルはそう言うと、うれしそうに軽快に歩き出した。

マリーを担いだザックが、その後ろを無表情でついて行った。

マリー、こんな奴らがいる外の世界で暮らすより、君は魔法隊として城で暮らした方が幸せになれる。

ザックはそう思いながら、勇者ミハエルの後を歩いた。
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