能ある魔女は目を隠す?!二つの秘密を抱えたお世話係は知らない間に王子に溺愛されてました!
「魔法塔に連れて来られたことは覚えていらっしゃいますか?」

と、メグは、逆にマリーに聞いた。

「・・・覚えてません。」

と、マリーが言うと、メグは、

「そうですか。私も上からマリー様のお世話を命ぜられただけですので、詳しいことは分かりませんが、

とにかく丁重にもてなすよう言われました。ですので、この貴賓室にご案内した次第です。」

と、言った。マリーはその話を聞いて、

「私を?丁重に?一体どうして・・・。」

と言った。

「何か心当たりはありませんか?」

「ありません・・・。魔女だからてっきり魔法隊に入れられるのかと・・・。」

「ああ!ご存じなかったんですか?」

と、メグの声が急に大きくなった。続けてメグは、

「先日、法律が変わったんです!」

「法律が変わった??」

マリーはきょとんとしていた。まだ何の話かピンと来ていなかった。

「ええ!王太子殿下が法律を変えたんですよ!」


と、メグは嬉しそうに満面の笑みで言った。そして興奮しながら話を続けた。

「王太子殿下が、魔女の魔法隊入隊の義務を撤廃したんです!魔女も自由に職業を

選べるようになったんです。それだけじゃなく、魔女の魔法隊入隊も、魔力の強さなどをみて、

合格した者だけが入れるようにして、高い報酬が本人にのみ支払われます。以前は、

魔女を差し出した家族にお金が支払われていましたが、法律を変えたことによって、

今後は魔女の子供が売られることがなくなるんです!すばらしいでしょ!」

と、メグは、まるで自分の手柄のように話した。

「じゃあ、隠れ魔女はもう隠れなくていいということですか?」

「はい!だからマリーさんも、目を隠さず、堂々としていてくださいね。」

と言った。メグの勢いはまだ止まらず、

「王太子殿下は本当にすばらしい方で、王様の為に・・・・」

と言いかけたところで、トントントンと扉がノックされた。メグはすぐさま、

「ちょっと失礼します。」

と言って、話を中断し、扉に駆け寄った。

扉を開け、何やら執事らしき人物と少し話をすると、再び扉を閉めた。

メグは、慌ててマリーに駆け寄ると、

「王様がマリー様に会いたいとおっしゃっておられるので、すぐに準備をお願いします!」

「王様が??」

マリーは驚いた。国で一番偉い人で、まず会えることなどない人物だ。そんな遠い存在の

人が、何故私なんかに??

「あの、何かの間違いじゃないでしょうか・・・。」

「いえいえ!そんなことはありません!マリー様がお目覚めになられたという連絡を受けての

謁見のお話ですから!とにかく急ぎましょう!」

と言うと、メグはバタバタと動き出し、部屋のワードローブを開けると、

色とりどりの衣装の中から、コルセットと淡い薄紫色のドレスを取り出した。

そして、それをマリーに手際よく着せ始めた。

「あの…このドレスは一体??」

マリーがメグに聞くと、

「あ、私、メイド暦三年で、見ただけで、大体のサイズが分かるんです。

それで、あらかじめ、何着かセレクトしてドレスをご用意させていただいておりました。」

「ええっ??」

マリーは驚いた。

「驚くことでは・・・。もてなすよう言われておりましたから。さっ、出来ました。次は、

お化粧と髪を結わせていただきます。」

と言った。

「あの、そこまでする必要がありますか?」

マリーは不思議そうに言った。

「何をおっしゃいますか!王様に謁見出来る機会なんてまずありませんから!

身だしなみはきちんと整えませんと。」

「・・・はい。」

マリーはメグの勢いに押され、ドッレッサーの前に座ると、メグは手際よく、マリーの髪を梳かし始めた。

そして、マリーの前髪を梳かした時に、マリーの美しい瞳が現われた。

バイオレットサファイアのようなマリーの美しい瞳は

周りの光を全て吸い込むように輝いていた。

あまりの美しさに、メグの動きが一瞬止まった。

「・・・なんてお美しい・・・。」

「え?」

「私はこの城で、美しいと言われるたくさんの魔女を見てきましたが、その中でも、マリー様は

ずば抜けてお美しいです!特に宝石の輝きのような瞳。これは王子に見初められるかもしれませんね!

腕が鳴ります!」

と言って、再びメグは真剣にマリーの髪を結い始めた。
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