もう一度キミと青春を。


茅野家が一家でいなくなったのは、蒼空が行方不明になった翌日。


そしてさらにその翌日には、茅野家の取り壊し作業が始まっていた。


何かあったとしか思えない異常事態。


だけど、村の大人たちは何も知らない様子だった。


大人たちが知らないのなら、私たち子どもが知る由もない。


蒼空が消えた。


誰にも行き先を告げず、忽然といなくなった。


「花純ちゃん…、ご飯食べて」


「……いらない」


食欲なんかない。


暗い部屋の中に、蒼空との想い出の品を並べて見つめる日々。


初めてお揃いで買ったクマのキーホルダー。


夏祭りの日のツーショット写真。


蒼空が選んだ髪飾り。


飾り付けた姿は見せることができなかった。


「蒼空…会いたい…。どこにいるの…」


電話をかけても出ない。


“何十年先も、一緒にいようね”

“うん。約束”


あの約束は何だったの?


“叶ったときに教えてあげる”


あの時流した涙の意味は?


何を願ったの?


ねぇ、教えてよ。


蒼空。


今どこにいるの?


「会いたいよ…蒼空……」
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